Fitzcarraldo

太陽の子 GIFT OF FIREのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

太陽の子 GIFT OF FIRE(2020年製作のドラマ)
3.0
NHK職員の黒崎博が約10年前に広島の図書館で『広島県史』と題した資料集の中に、京都大学で原子物理学を専攻する若き科学者の等身大の日記を目にし「この若者たちの物語を形にしたい」と思い立つ。

日本海軍より原子爆弾開発の依頼を受けた京都帝国大学(現・京都大学)理学部の荒勝文策教授の「F号研究」の実話に基づくフィクションとして『神の火』"Prometheus' Fire"と題し執筆されたシナリオは【サンダンス・インスティテュート/NHK賞】(2014-2015)のNHK推薦作品となり脚本ワークショップでの改稿を経て、「サンダンス・インスティテュート/NHK賞2015」に出品され「スペシャル・メンション賞(特別賞)」を受賞。『太陽の子』"GIFT OF FIRE"と改題し、構想から十余年の年月を経て戦後75年にテレビドラマ化。

そして撮影後に自殺した為、本ドラマが三浦春馬の遺作となる。

あれだけワイドショーで騒いだ割には、他局のドラマの宣伝をするわけにもいかないのか…遺作ドラマは視聴率が10.7%…騒ぐだけ騒いだんだから最期の勇姿を見てやれよ!
なんか切ない数字やな…いまのドラマなら良い方なのかもしれないけど。

先ず山本晋也が役者で登場しているのに驚く…
『ポルノだよ!全員集合(秘)わいせつ集団』という舐めたポルノを撮っている監督が、さらにはトゥナイト2に出てた変態監督が、有村架純の父親役とは!有村架純が山本晋也の手をさすってあげてるのとか…絶対にアイツ喜んでやがる!と穿った見方をしてしまう。

さらに題字に赤松陽構造。
多くの映画タイトルを書いている赤松氏に頼むとは…山本晋也といい、なにか気概を感じる。

だがアンサンブルのシーンは、何かウソくさい!
胡散臭い!研究室での皆が一生懸命になるのは分かるのだが…皆が皆、同じ方角を向いて同じテンションで一生懸命にやるから、それが一本調子となって、なにか気恥ずかしい。学生演劇さながらで見てられない…

田中裕子の母キャスティングは最高!
田中裕子が母役を演じてるだけで、滲み出る温かさが心に染みる。どのドラマでも田中裕子はヤバイ…なんだろう声かな…やさしさに包まれる。

一番のハイライトは三浦春馬の出征を見送るシーン。母である田中裕子が下を向いて、なかなか息子の目を見ない!ここもリアルっぽくていいんだよなぁ!顔見て涙浮かべて…ってのはありがちだし、行かせたくないっていう本意なら顔は見れないよね…たぶん。

最後に…やっとのことで顔を上げる田中裕子…その時の表情ね、はい堪らない!
そして、半歩近づき抱きしめたそうな手だが、それを止めて、片手で春馬の耳を触る。
恐らくこれはアドリブだろう…

田中裕子の芝居を受けて、春馬も涙腺崩壊しそうなのを、グッとグッと口を横一文字にチカラを入れて堪えて背筋を正すとこも素晴らしい表情してます!貰い泣きしてもうたー。

これでホントに帰らぬ人となってしまった三浦春馬のことを考えると、創作ドラマが現実と地続きとなってしまった。やはり、あの若さで…命を断つというのは…量りしれない悩みがあったのだろう…それは誰にも分かってもらえるものではないのだ。苦しいな…
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