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けものみちのtakのレビュー・感想・評価

けものみち(1982年製作のドラマ)
4.0
松本清張没後30年で、NHKが過去のドラマ作品を再放送。ミステリー主体の清張作品は10代の頃から好きだったが、権力と社会の裏側が描かれる作品をあの頃はまだ面白いとは思えなかった。このドラマ版「けものみち」が放送されたのは僕が高校時代。今回初めて見た。

あの時代の土曜ドラマって、大人が見るものとは思っていたけどこれはどぎつい。何がすごいって和田勉演出のど迫力。カメラはひたすら表情をアップで撮る。テレビドラマという制約があるから、その場面で起きている全てを画角に捉えることができない。それを表情やディティールだけで、視聴者に納得させてしまう力技。「ボヘミアンラプソディ」のPVみたいに下のアングルから映された西村晃は、顔色ひとつ変えずに次々に命を下す。怖い。

西村晃といえば、僕ら世代には「水戸黄門」のイメージがある。しかし時代劇フリークの母が
「もともと西村晃は悪役。水戸のご老公役なんて彼の本領じゃない」
と切り捨てた。その頃は母の言うのが分からなかったが、この「けものみち」を見て理解できる。怖い。「たみこ…」と名取裕子を呼ぶ声の響き。その声を聴いて思い出した。そうだ!「ルパン三世vs複製人間」のマモーはこの人だよ。

病の床にありながら、夜な夜なお気に入りの女をおもちゃにする老人。行為の全てを撮れないから表情だけをトリミングしてるような映像だが、それだけでも緊張と快楽がビシビシ伝わってくる。昔読んだ五木寛之の小説に出てきた性技に長けた老人を思い出した。

社会の裏側というダークサイドの底なしの怖さ。事件を追ってそこへ踏み込んだ刑事の末路。そして、名取裕子がだんだん悪女の顔になっていく変貌ぶりが美しい。ムソルグスキーの「はげ山の一夜」の使い方が見事。こうした権力がらみの清張作品は、いろんなしがらみを知った大人こそ楽しめる。今の年齢で見てよかったかも。
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