tetsu

24時間女優ー待つ女ーのtetsuのレビュー・感想・評価

24時間女優ー待つ女ー(2013年製作のドラマ)
4.0
かつて、ローカル局で放送された際にハマり、久々に観たくなったので、TSUTAYA DISSCASの宅配レンタルで視聴。


[概要]

今や日本映画界を代表する今泉力哉監督・松居大悟監督の演出や、夏帆さん・有村架純さん・橋本愛さんといった人気女優たちの演技アプローチを窺い知れるオムニバス番組。

ひかりTV制作、24時間以内に限られた撮影現場(約16分)のメイキングと「待つ女」をテーマにしたショートムービー(約8分)の二部で構成されている。


[感想]

いまだに知名度が低すぎて、完全に損をしていると思う、お気に入りの企画番組。

本番組で今泉監督&松居監督の作品を初めて観て以来、その衝撃が脳裏を離れず、その2話だけは、3~4年に1度、自然と見返してしまう。

今回、ネットでレンタル可能と知り、初めて全話完走したが、他の回も予想以上に面白かったので、かなり満足。

無名時代の若手俳優(太賀さん、三浦透子さん、岡山天音さんなど)の出演や、撮影現場の裏話などは、今、改めて観て楽しめる部分でもあり、かなり、嬉しかった。

日本映画ファンであれば、今泉監督回&松居監督回は必見!


[各話感想]

**************************************

#1

[出演]
夏帆、仲野太賀、三浦透子

[監督]
松居大悟

[あらすじ]
上京後、とある理由で帰郷した女性。ひさびさに、かつて思いを寄せていた同級生にあった彼女は……。

[感想]

8分間の中で、主人公の性格、ひいては、人生が見えてくる脚本が単純に上手い。

監督の「登場人物の背景を詳しく設定する」という演出法や、役者と相談しながら演技プランを決めていく戦法が、カチッとハマっていた印象。

そのため、普通に脚本作りの勉強になった。撮影時の仲野太賀(太賀)さんのムードメーカー感がハンパではなく、この人徳と演技力があれば、そりゃ売れっ子になるわ……と、めちゃめちゃ納得しながら見た。

**************************************

#2

[出演]
波瑠、芹澤興人、山田真歩

[監督]
今泉力哉

[あらすじ]
結婚式の控え室。不機嫌な新婦は友人カップルに衝撃の告白をする……。

[感想]

今泉監督の作品を追ったうえで、改めて鑑賞すると、作家性が5倍ぐらい濃縮された脚本に笑ってしまう。というか、これ、『街の上で』を除いたら、監督の作品で一番面白いのでは?笑

初期作で繰り返された「群像劇」や「トリッキーな物語構造」が、ワンシチュエーションという制限によってなくなり、「コント的会話劇」へと集約された面白さ。

今泉作品の常連・芹澤さんの安定した「可笑しさ」と、役に入り込み過ぎて、現場でも「不機嫌」になっていたw波瑠さんの熱演による温度差が、奇跡的な化学反応を起こしていて、最高だった。

ラストの登場人物も含めて、今泉ワールド爆発の作風が至高。

**************************************

第3話

[出演]
北乃きい、岡山天音

[監督]
山本透

[あらすじ]
神社の脇、ベンチに座って、誰かを待っている女子高生。しかし、彼女の前に現れたのは、動物の覆面を被った謎の集団で……。

[感想]

久々に見ると、全盛期の北乃きいさんが輝きすぎていて、めまいをおこしそうになる回。

眩しいほどのキラキラオーラに圧倒されつつも、しれっとアクションシーンをキメていくさまがカッコよすぎて、焦る。

ドラマの感想としては、テロップで遊ぶメタ的演出や、何気に板についている岡山天音のラップ披露が楽しかった。

**************************************

第4話

[出演]
逢沢りな

[監督]
石川北二

[あらすじ]
交通事故のあと、死んだ人間を憑依できる能力を身に付けた女性。彼女には、会いたい相手がいた……。

[感想]

炎神戦隊ゴーオンジャーのゴーオンイエローで、日本中の特撮少年の憧れの的となった逢沢りな御大の全盛期で、これまた、最高。

物語の内容は、『ツナグ』を筆頭とした近年のあるあるメジャー邦画といった感じだけれど、御大の存在感で乗り切るという力技だった。

演技力はさておきw、数分間の中で、赤ちゃんから中年男性までを演じ分ける挑戦的な試みは面白かった。

**************************************

第5話

[出演]
夏菜、青山草太

[監督]
Yuki Saito

[あらすじ]
雨の降る夜。びしょ濡れの女性を家に招き入れた男。しかし、彼女には、とある秘密が……。

[感想]

いかにも、出会う男すべて狂わせるガール的な夏菜さんの演技が至宝。

夏菜さんと言えば、『純と愛』辺りの"気が強い系女子"のイメージが強かったので、久々にデビュー当初(『GANTZ』など)の"男を惑わす系女子"の演技を見れたのが、良かった。

監督に積極的に話しかけ、場を盛り上げていく人柄など、座長としてのポテンシャルの高さに好感度が上がった。

何気に、相手役の青山草太さん(『ウルトラマンマックス』主役)がド緊張してて、彼に同情した。

**************************************

第6話

[出演]
有村架純、宇野祥平

[監督]
草野翔吾

[あらすじ]
郵便配達用トラックの運転席で口論を続ける男女。女性は、子供を堕ろそうとしているようだが……。

[感想]

これまでの主演女優の中でも、良い意味で、"ゆるい雰囲気"を醸し出していて、"場を和ませる"空気感作りが上手いように感じた有村架純さん回。

撮影後、監督と自ら両手で握手をしにいく場面を見て、この頃、めちゃくちゃ売り込んでたんやろうなぁという苦労を感じた。(←憶測が強い……。)

まさかの展開のショートムービーに関しては、アイデアの良さは感じたけれど、これまでの作品と比べると、若干、短編向きではなかった気も。明かされる事実が急すぎて、飲み込みづらいこと、この上なかった……。

**************************************

第7話

[出演]
橋本奈々未

[監督]
栢菅翼

[あらすじ]
自分語りをする女性。とあることを「待つ」彼女の正体とは……。

[感想]

乃木坂46出身、本業がモデルやアイドルの橋本奈々未さんを起用した回ということもあり、シリーズの中では、最も内容の軽さが目立っていたのが、少し残念。

橋本奈々未さんのアイドル力は間違いないので、決して演技が下手とか、そういう枠組みで判断するべきではないとは思うけれど、やはり、過去の回と比べると、その取り組み方の熱量の違いは大きいように感じた。

今回の監督が、本シリーズのOP映像も担当していた広告業界出身の監督·栢菅翼さんということもあり、どうしても、CM的で深みのない内容は気になった。

監督がインタビューで「そもそも、なぜ、待つのが"女性"でなければならないのか、という疑問にも取り組みたい」と語っていたゆえに、そこに触れることのないコントのような内容に、若干の肩透かし感を抱いた。

**************************************

第8話

[出演]
橋本愛、岡山天音、小林涼子

[監督]
飯塚健

[あらすじ]
映画『大人ドロップ』から数年後、故郷に帰ってきた女性・入江杏が、かつての同級生・野中春と再会する。

[感想]

まぁ、映画の宣伝ですよね……。苦

本編を観ていなくても楽しめる内容であれば、そちらも追ってみようとは思ったけれど、映画の余韻に頼りきった内容には、若干、首を捻ってしまった……。

シリーズで唯一、監督とキャストが面識アリということに期待はしていたけれど、1日で覚えて撮影するには負担が大きいセリフ量など、過酷なハードルを要求する監督の姿勢には、少し困惑する部分も。

結果、橋本愛さんが追い詰められてしまい、密着班も気を使って撮影をしているため、番組としての企画倒れ感はハンパではなかった。

『大人ドロップ』のファンだけ、観れば良いと思います……。

**************************************
tetsu

tetsu