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それでも、生きてゆくのJTのレビュー・感想・評価

それでも、生きてゆく(2011年製作のドラマ)
5.0
"何のために悲しいお話があるのか"

久しぶりに鑑賞したのと
最近『3年A組』と言うドラマが巷で話題になっているのでそれについて少し話したくて

『それでも、生きてゆく』は2011年の震災の年に放送されていたドラマです

1960年の夏、主演の瑛太演じる深見洋貴の7歳の妹が湖で遺体で発見される
妹を殺害したのは洋貴の友達の少年Aであった
それから15年後、少年Aの妹に出会い
被害者家族と加害者家族の葛藤が交差していく

当時は「重い」「暗い」 「おもしろくない」などと叩かれて視聴率も酷かったそうで
そんな中私の家族は毎晩このドラマがある日だけ茶の間に集まって一緒にじっと観ていました
私自身が震源地の宮城で震災を経験したこともあってこの作品は非常に心に焼き付いていて
歳を重ねるごとに観るたび感情をえぐられて揺さぶられて時には抱きしめられて
死ぬまでずっと離すことができないものと感じます

全11話ですが毎回ずっと悲しいです
でもそれだけじゃないんです
どこか温かくてクスっと笑えて
笑顔にさせられるのと同時に泣かされたり
登場人物の全員が今にも壊れそうで
心の脆さに悔しくて泣きたくて苛立って
どうしようもなくもがいてあがいて
生きる意味すらもわからなくて
罪のない人が苦しんで悩んで
誰のせいにもできなきなくて抱え込んで
でも誰かと繋がりたくて
被害者でも誰かを傷つけるし
加害者でも誰かに傷つけられる
絶望の中でも確かに感情はあって
誰であろうと何かを感じる権利はあって
感情を沸き立てる心を持っていて
心をただ持っているだけでは腐っていくだけで
あなたが、私が、みんなが、心を誰かに与えて
あなたの隣にいる誰かに心を
そしていつか大切な誰かの元へ届けるために
絶え間のない時間の中であなたに心を

ここまでの傑作が誕生したのは完璧な脚本と演出と音楽とキャスティングとロケーションが揃ったから
脚本が素晴らしいおかげでその存在すらも疑った
どうしたらここまで自然に構築できるのか
台詞も動作も疑う余地がないほど自然で
絶望の中で滲むユーモアもとても清々しい
ドラマを観ていると言う感覚さえ忘れてしまうほど
まるで本当にあった出来事とホンモノの人たちを見ているような感覚に陥った
瑛太を始め、満島ひかり、大竹しのぶ、柄本明、風間俊介、時任三郎、風吹ジュン
どんな褒め言葉でもその演技を賞賛するに値しないほどに、真に迫った生きた演技をしていた

日本もこれほどなまでの素晴らしい作品を生み出せるのにいまのドラマはどうしてこうも拗らせてしまっているのだろうか
『3年A組』を観て思ったことなのですが
こう言う類の「重い」テーマを受け入れられるのならどうしてもっと賞賛されるべき観るべきものに目をくれないのか
「重い」から評価されるのではないのです
「泣ける」から良い作品ではないのです
脚本と演出と言う断固としたものが評価されるべきなのです
『3年A組』が駄作だとも思いませんしつまらないとも思いませんが、過剰に評価されている印象だったので、どうしても『それでも、生きてゆく』のような評価されるべきものに目を向けて欲しいです

個人の好みと言ったらそれまでですがそれでもこの作品をもっと広めたい...
ただその一心でつらつらと書かせて頂きました



この作品を見終えると誰もが満島ひかりに恋をしていると思う。。。
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