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それでも、生きてゆくのヘイヘイのネタバレレビュー・内容・結末

それでも、生きてゆく(2011年製作のドラマ)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

もう1話目からしんどい。胃がキリキリ。

7歳だった長女を殺された被害者家族、少年Aと加害者家族の15年後を描いた作品。被害者側が永山瑛太、田中圭、大竹しのぶ。加害者家族側が満島ひかり、風吹ジュン、時任三郎、福田麻由子、風間俊介が演じてます。

毎話、いろんな気持ちが溢れてしまう。俳優陣の演技と脚本含め半端ない密度の濃さです。長回しと長尺台詞ほんとに圧巻。(特に5•8話の大竹しのぶ)
 
“自分の家族が殺される”という事が一体どういう事なのか。普通なら考えたくないような事を題材に真正面から扱ってます。
だから、重い。

あの日娘が殺されたのは、丈の短いスカートを履かせていたからだと自分を責め続ける母親。15年の間、娘が殺される前に性的な行為をされていたんじゃないかとずっと考え続け、苦しんでいた母親がその苦しみから解放されるシーンは、もう言葉にならない。こういう描写ってタブー視されてなかなか扱い辛いと思うんですが、実際はそういうことを考え続けちゃうと思います、やっぱり。

もし、自分の娘を殺されたら、犯人だけでなくその家族もやっぱり許せない。
でも、自分がその加害者の家族になってしまったら?考えたくもないけど、現実には毎日世界中で起こっていることですよね。

そういう風に考え始めたら、登場人物の全員に感情移入できすぎて、もう心が壊れそうです。
また、赦す者/赦される者っていうテーマは、”スリービルボード”にも通ずる普遍的なテーマですね。

家族を見捨てる事は許されない?
そもそも家族の定義って、血縁関係?
作品の主軸はあくまで15年前の殺人事件ですが、エピソードが進むほど枝葉がどんどん色んな方向に分かれていきます。

OPの歌(小田和正)・劇伴(辻井伸行)も内容にとても合っていて、心に沁みます。
毎話主題歌が挿入されるタイミングが神なので胸がギューっと押し潰されます。
全体的には、生真面目な社会派一辺倒ではなく、家族愛、サスペンス的な要素もバランスよく1話の中に配分されていて、ほとんど飽きずに観れました。

特に8話の大竹しのぶ vs 風間俊介、10話の永山瑛太vs風間俊介の演技は巻き戻して観てます。10話のクライマックス、瑛太の独白を受けての”お腹すいた”は、もう悶絶モノです。あ、これ、絶対分かり合えないやつだ、っていう絶望感。そして、ポテトサラダじゃなくてマカロニサラダが出てくる追い討ち…
このマカロニサラダが出てくるっていうとこに普通に話してても”分かり合えない”ていう圧倒的な絶望感がありましたね。

とても良い作品ですが、現状配信サイトはFODのみ。自分も観始めるまでは、なんだか重そうだなぁ、とか地上波放送時に問題があったイメージ(JAP18事件)が先行してますが、1話観たらもう止まらなくなってしまいました。

坂元作品は大好物なのですが、正直Woman、anone、いつかこの恋を〜とかは、序盤から中盤まではすばらしいのに、最後のまとめ方が•••で残念でした。
その点、今作はテーマが一貫していて、終盤のまとめ方もすっごいよかったです。

劇中、”なんのために悲しい話(フランダースの犬)があるの?何でわざわざ人間は悲しいお話をつくるんだろう”っていうメタ的な問いかけシーンがあり、それがすごく印象に残ってます。答えは人それぞれあると思いますが、この問いかけに対する脚本家としての坂元氏の着地は素晴らしかったです。

15年間閉ざしていた過去と向き合い傷つきながらも、生きていく者。罪と一緒に生きていく者。被害者として、加害者家族として、それでも、生きてゆく。

おすすめです。(坂元信者)


“朝日をみると、生きる希望が湧いてくるのです。”
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