Kitty

呪怨:呪いの家のKittyのネタバレレビュー・内容・結末

呪怨:呪いの家(2020年製作のドラマ)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

じゅおん【呪怨】つよい怨みを抱いて死んだモノの呪い。それは、死んだモノが生前に接していた場所に蓄積され、「業」となる。その呪いに触れたものは命を失い、新たなる呪いが生まれる。

心霊実話の新たな切り口。Jホラーの更なるアップデートが果たされた作品。

まず秀逸なのが脚本。実在の事件を随所に挟むことで、全話を通してフィクションラインを低く設定し続けることに成功している。また、実在の事件に対しての市民の反応が併せて描かれることで、その時代特有の世間の不穏な雰囲気や市民の抱える不安感まで表現している。
M君の介入により物語が大きく前進する展開も見事。自分はリアルタイムを生きていた人間ではないのでネットに散らばる彼の情報からの推察になるが、彼が物語を進めるピースになることも、事実はともかく、少なくとも創作として納得のいく理由はあるように思う。

また、ホラーと上記の実録犯罪史的な要素が組み合わさって全く新しい作品になりつつも、本質を辿ってみれば紛れもなく呪怨である。
今回は年代順に物語が進んでいくので前半こそ清水版「呪怨」に比べれば取っ掛かりやすい印象を持つが、それも徐々に崩れていき、後半になるに従って時間と空間の乱れが強くなっていく。蓄積されていった「業」によって徐々に呪いが強くなっていったことの表現だろうか。それがクライマックスや結末に繋がっていくという展開が鮮やか。
この乱れによるストレスや不安感こそ、呪怨の魅力の1つだと思う。

また、恐怖描写を挟むテンポ感もさすがは高橋さんと一瀬さん。小気味良く強弱がつけられつつ緻密に配置された恐怖描写、3時間で1本の作品として観ても6話のドラマとして観ても見事でした。
その脚本にベストな演出をする三宅監督もさすがの手腕。
監督が脚本の意図を完全に映像化していたように思う。

高橋洋作品の特徴でもある足のショットや、亡者のピントをぼかす心霊実話的な演出、どれをとっても無駄がない。
特に印象的なのは、はるかが猫屋敷の2階に人影を見つけ目をそらすシーン。観客が「やばいモノを目撃してしまった!」と認識できた瞬間にカットが切り替わり、以降2階を映さずにはるかは去る。この観客とキャラクターの心理がリンクした演出が随所にあり、それがリアルな恐怖に繋がっている。
暗闇や余白への生理的な嫌悪感を煽る演出も見事。はるかの家のドアの先、屋根裏部屋の奥、ピンぼけした家の奥など何気ないカットに違和感や気持ち悪さを随所に感じさせてくる。
ショックシーンに至るまでが脚本・演出ともにかなり丁寧に描かれているから各話のショックシーンが映える。

そこに役者の抑えた演技が加わり、さらに作品が素晴らしくなっている。
特に荒川良々さんと柄本時生さんの絶妙な実在感。

すべての要素が密接に絡み合い、ホラーの傑作が誕生した。久々の恐怖体験でした。
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