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呪怨:呪いの家のタケオのレビュー・感想・評価

呪怨:呪いの家(2020年製作のドラマ)
4.2
 本作『呪怨:呪いの家』(20年)に渦巻く「恐怖」は、視覚的なインパクトに「恐怖」の重点を置いていた清水崇監督の『呪怨』(00年)のそれとは明らかに異なるものである。確かに「幽霊」や「呪い」といった「超常的な存在」もいくつかは登場するが、本作の「恐怖」の本質はそこにはない。本作は「超常的な存在」そのものではなく、その根底にある「人間の業」にこそ真の「恐怖」を見出している。
 物語の舞台は88年から97年の日本となっているが、昭和から平成へと元号が変わる「時代の変わり目の日本の姿」を生々しく描くために本作は、「女子高生コンクリート詰め殺人事件」「東電OL殺人事件」「酒鬼薔薇聖斗事件」といった実際に起こった忌まわし事件の記憶を物語の中へと忍ばせている。そうすることで本作は、凡庸な「Jホラー」とは一線を画す実在感に満ちた「恐怖」を描出することに成功した。自分が気づいていないだけで、人間の深い業のサークルによって生まれた「呪いの家」は実は目と鼻の先にあるのでは?本作は、久しく忘れていた「すぐ隣にある恐怖」への感覚を呼び覚ましてくれる。
 経済格差、家庭内暴力、いじめ、差別、性暴力といった社会問題は今なお根深く残っており、改善される見込みもほとんどない。だからこそ、傷付けられ、蔑まれ、社会から見放された魂の「怒り」や「憎しみ」のサークルが「呪い」となって多くの人間たちに牙を剥く本作の「恐怖」には、「他人事」としては割り切ることのできない「普遍性」がある。本作で描かれた「呪い」など氷山の一角に過ぎず、罪深い人間の業がある限りその「恐怖」はいつどこにでも訪れる。『呪怨:呪いの家』は、「日本という国そのものが呪いの家である」という残酷な真実を見事に暴き出した。
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