なべ

呪怨:呪いの家のなべのレビュー・感想・評価

呪怨:呪いの家(2020年製作のドラマ)
3.2
 呪怨とリング。二大和製ホラーとして並び称せられることが多いけど、ぼくに言わせりゃ、呪怨などリングの足下にも及ばないキャラホラー映画だ。キャラ造形頼みのショッキングな映像のみを繋いで、動機や理由については言及を避ける、物語を放棄した作風には共感も感動もできない。
 そういう意味で、今回のドラマ版は初めて納得できる呪怨だった。
 最も近いのは残穢かな。あとリングやツインピークス風味もあった。あ、ホーンティング・オブ・ヒルハウスの首折れ女の影響も感じたな。

 あの家を舞台にした、いろんなエピソードが時代ごとにあって、それぞれの時系列が時々歪んでリンクするって趣向だ。なんとなくありし日の日活ロマンポルノを偲ばせる湿ったテイスト。貧乏くさくも、おもしろいものを作ってやろうという気概が静かに流れてる感じだ。
 各エピソードは舌足らずなところがあり、もう少し説得力があれば見応えあったのにともったいない感じはしたが、これまでのただ表現が怖いだけの呪怨から逸脱してみせるのはかなり勇気がいったのではないかと思う。
 ただし、名古屋妊婦切り裂き殺人事件や東京埼玉連続幼女誘拐殺人事件、東電OL殺人事件など、実際の事件を絡めながら禍々しいリアリティを高めていく手法はヨゴレ。忌まわしさを実際の事件から剽窃して、観客の犯罪の記憶を使って厭なバイアスをかけてくるのは狡猾すぎる。てか鬼畜。効果的ではあるけど、実際に被害者や当事者が存命の生々しい事件を、怖がらせに利用するのは倫理的にアウト。人として許されない。高橋洋ともあろう者がこんな禁忌を犯しちゃう?

 怖かったかと聞かれれば、怖くなかったが、それでも終盤2話の畳み掛けは前のめりになって観てしまった。
 心霊研究家の小田島の「なんでこんな話を集めているのか」という本人もわかっていなかった理由が、明らかになっていく流れはとてもステキだ。
 キャスティングを聞いた時、黒島結菜はホラーに合いそうと思ったが、やはり相性抜群! 普段はコメディエンヌ的な扱われ方だが、憂いと気配が感じられる彼女の顔はとてもホラー映えしてる。
 対する荒川良々はホラーとはあまり親和性がないのでは?と危惧していたが、案外アリ。悪くなかった。
 里々佳はがんばってはいるけどへた。昭和な感じがせず、存在に違和感あり。観ていてリアルな恐怖が湧いてこなかった。

 このクオリティでシーズン2に続くなら観てもいいと思っているが、これだけは言っておきたい。

 実際の事件をそのまま使うのはもうやめろ!

 人としてそれはやっちゃダメだ。特に当時、容疑者として散々疑われワイドショーなどで袋叩きにされた遺族を、再び犯人とするなどもってのほか。悪魔の所業としかいえない。表現の自由の前に人権侵害の訴訟案件。こっぴどく訴えられてほしい。ネトフリの企業としての正気を疑う。
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