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呪怨:呪いの家のtntnのネタバレレビュー・内容・結末

呪怨:呪いの家(2020年製作のドラマ)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

自分はJホラーには疎く、リング、仄暗い水の底から、らせんなどJホラーのビッグタイトルでさえ未見です。呪怨シリーズも一つも見たことがなかったのですが、所謂「知らない状態には戻せない」という理論によって、あえて何も知らない状態でドラマ版を見ました。
終盤、具体的には5話、6話あたりから、遂に舞台となる呪いの家の中枢に乗り込んでいく展開になりますが、ここでのホラー演出がとにかく素晴らしい。呪いの歴史の全てが主人公たちに襲いかかってくることを表現するかのように、カット毎、時には同じシーンの中でさえ次々と呪いのモチーフが登場する演出は圧巻でした。
高橋洋がタマフルに出演した際「複数の恐ろしい話や映画を、上手く順序立てて観客に見せると、やりようによっては観客を死に至らしめるほど怖がらせられる」というようなことを言っていたと思うのですが、まさにその本領が発揮された場面のように思えます。
また役者陣の演技も素晴らしく、悲惨な運命を遂げていく聖美を演じた里ヶ佳さんは特に強烈な存在感を残していましたが、個人的に一番グッときたのは事件を追うライターの小田島に扮した荒川良々さんです。
幼い頃からまとわりついてきた呪いの真相を知るために人生を費やし危険な領域まで足を踏み入れながら、結局その全貌を知ることはできない。決して解決されないであろう呪いと共に、決して多いとはいえない残りの人生を生きていくしかないという彼の悲哀を、荒川良々さんは体現しているように思え、終盤の刑事との事務所でのやり取りは思わず泣きそうになりました。
不満点としては、終盤の盛り上がりが凄いだけに、前半(1.2.3話あたり)をもう少し面白くして欲しいと思いました。個々のエピソードに不穏さは感じるのですが、どうしてもぶつ切りに思えてしまう部分がありました。ただ、全話見終わってから考えると、ディスコで消えた2人はどこに行ったんだろう?とかゾッとする細部も多いので、トータルとしてはかなり満足できた作品でした。

SNSなどで一部言及されていた女性の描き方問題について。
確かに言葉にならないほど陰惨で救いのない目に女性が遭うドラマなのは確かです。
ただし、本作の作り手はホラー映画畑の人であり、このシリーズは「ホラー映画」のリブートなわけですから、その手の題材に「ホラー」としてアプローチするのは真っ当なようにも思えます。
陰惨で救いのない惨劇を陰惨で救いがなく描くのはむしろ誠実とも言えるのでないでしょうか。
ネタとしてしか消費していないとするなら、むしろ安易な人間ドラマや腰の引けた描写(直接グロを見せるか見せないかではなく、それに至るまでの描写の積み重ねの方が必要)に陥っていたと思いますが、それをしないで、ここまで議論を呼ぶほど徹底的に描き切ったのは間違いではないと思います。
ただ、確かに反発を招くほど陰惨なのは確かですし、実際の事件もあまりにもヘヴィーです。「不快」を敢えてやってるというスタンスに腹が立つのもわかります。
なので、このドラマに反感を抱く方の意見は尊重されるべきとも思うし、作り手のスタンスも称賛されるべきだとは思います。
この件で一番許せないのは、「Jホラーという由緒正しいジャンルにテキトーに口出してるフェミうぜえ」とか抜かす中途半端なオタク達です。
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