TaiRa

anoneのTaiRaのレビュー・感想・評価

anone(2018年製作のドラマ)
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生きていられない程の悲しみを抱えた人たち、息をするのも辛いけど、それでも生きていく。

後から振り返れば異色な1話で始まった「嘘」にまつわる物語。擬似家族による偽札作り、嘘の記憶、嘘の告白。いつか壊れてしまうのではないかと思わせる関係性ゆえに、幸福の瞬間はいつも寂しい。死の匂いも濃厚。青羽(小林聡美)の報われない人生を振り返った4話の切なさ。心の拠り所は死者にしかない。心が死んでしまった中世古(瑛太)の虚無感は恐ろしいが、彼は陽人くんにだけは優しさを見せ、彼を守る為の嘘をつく。中世古はサリンジャーの小説に出て来る人物のようだった。彼の過去は最後まで詳しく語られない。弟の死を暗示させるだけ。持本(阿部サダヲ)の余命宣告で始まるドラマでもあり、彼の死は約束されている。「同じ所を歩いていた」西海(川瀬陽太)の自殺も彼の先の無さを切実にする。「偽物の母親」に囚われた亜乃音(田中裕子)はハリカ(広瀬すず)の「本当の母親」になっていく。ハリカは彦星(清水尋也)の為に生きる。彼女のつくカーテン越しの嘘は今作のハイライト。人生はやり直せるが望んだ人生はもう手に入らない、なら新しい人生に希望を見出そう。でないと辛すぎて死んでしまう。
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