ミーハー女子大生

隣の家族は青く見えるのミーハー女子大生のレビュー・感想・評価

隣の家族は青く見える(2018年製作のドラマ)
3.8
一言でいうなら「良く出来た連ドラ」。
シリーズの序盤では登場人物の多さが仇になり若干群像劇に主人公夫婦が埋もれがちになったり、舞台であるシェアハウスが活用されなかったり、不安要素が無くもなかった。
また、「妊活」と言う重いテーマを扱うことにも懸念材料ではあった。

しかし、6話あたりから雰囲気が変わって来た。
大器の妹・琴音の赤ちゃんがお宮参りを迎え、人工授精に失敗し続けている奈々が精神的に追い込まれた頃から、物語がグッと主人公夫婦にフォーカスした。
これが良かった。
やや散漫だった物語が奈々と大器夫婦とその他の家族と差別され、ドラマの芯が見えた。

7話以降は、「一話完結型連ドラ」には無い、毎週見ているからこそ楽しめる4つの家族、カップルの四者四様を奇を衒わない騒動を積み重ねて、笑いあり涙ありを描いた。
ここで褒めるべきは、4つの価値観を思い描いていたよりも、かなり掘り下げつつ明瞭に描き分けたこと。

特に、「子供を作らないカップル」と「男性同士のカップル」は、法律上の夫婦となっている「子供が欲しいカップル」と「幸せを装う夫婦」とは異種な存在と捉えがちなのに、そこを丁寧に偏見なく描いたことで、偏見を持っていた視聴者も考えを改めるきっかけに十分だったようにも思う。

さて、最終回でどんな夫婦像を描くのか気になっていた奈々と大器の夫婦だが、物語上は暫く「子供のいない夫婦の人生」を選択した。
この展開もお見事。
結果的に「妊活」を通して「結婚とは何か?」と言う全体に通じるテーマへしっかりと帰着させた。
奈々と大器に子供が授かるエンディングも書けたはずなのに、敢えての選択。

「妊活」を一旦休んで、子供のいない夫婦の人生を考える奈々と大器の選択。
子供を授かった視聴者も諦めた視聴者も、更に奈々と大器を応援してきた視聴者も傷つけないエンディング。
ただ、4つの家族を考えると、かなりドラマならではの大団円でやり過ぎ感も無くもない。
ただ、他の3つの家族を中途半端に終わらせるのは良くないこと。

これは、あくまで主人公夫婦の物語だから。その意味では「夫婦」「カップル」「家族」を改めて考える動機付けに、様々な家族の在り方、LGBTの存在、親子の関係などを「特殊」なものでなく「普通」として描き切ったのが良かった。
良質な心の温まるホームドラマだった。