Larx0517

9-1-1: Lone Star シーズン1のLarx0517のレビュー・感想・評価

9-1-1: Lone Star シーズン1(2020年製作のドラマ)
3.2
「40歳を過ぎたら、男は自分の顔に責任を持て」
と、言ったのはリンカーン大統領。

歳を取ってからの方が格好良いと思える俳優はそういない。
その稀有な存在の1人が、今作発表時56歳のロブ・ロウだと思う。
映画『マスカレード』で、女性をとりこにした、甘く爽やかな青年。
しかし翌年1988年未成年の女性との関係を自ら撮った映像が流出するスキャンダルが勃発。
当時まだまだ保守的ハリウッド。
このまま消えてゆくかと思われた。

その後、スキャンダルを逆手に取るような悪役から、コメディ、主役から脇役までやりながら、今の地位を築く。
その基盤となるのは確固たる演技力があるからだろう。

個人的には、『ブラザーズ&シスターズ』『コード・ブラック』が彼の出演作では好きな作品。
両方とも、ドラマで、脇役。
前作では元軍人の政治家。後作では元軍人の医者。

今作では消防士の隊長。
さらにゲイの息子に理解のある父親。
マッチョな消防士とゲイフレンドリーという、大抵は相反する要素を無理なく演じている。
シーズン2の話になるが、TKのパートナーのカルロスと、テキサスレンジャーの父との葛藤が描かれる。
ゲイカップルのそれぞれの父親との関係の対比が際立つ。

薬物中毒のゲイの息子のために、大好きなNYからオースティンに引越し(テキサスでもNYメッツの帽子を被り、Tシャツを着る)、同居し、自分の部下とする。
父であり、ボスであり、メンターである。
今作を観て、オーウェン=ロブ・ロウが自分の父親だったらと、夢想したゲイがいったい何人いるだろう。
filmarksには、クレジットされていないが、オープンゲイのライアン・マーフィーが製作にいる。
彼が制作したドラマ『Glee』では、車の修理工の父とゲイの息子との関係が描かれている。
今作で、ゲイの息子TK、そして父親との関係の描写は、彼が大きく影響しているのは明らか。

一方ロブ・ロウのリアルライフでは、初婚の女性と30年連れ添い、2人の息子がいる。

「元軍人」という肩書きは、アメリカでは圧倒的なインパクトを持つ。
トランプ前大統領が当選した時に「『元軍人』というラベルを持たない大統領」と言われるくらい。
文字通りヒーローなのだ。
そこに、さらに政治家、医者、そしてリベラルな消防士。
文字通り、多くのアメリカ人が理想とする、アメリカンヒーローを無理なく演じられる俳優。


すでに本国アメリカでは、シーズン2も放映されている。
シーズン1の目玉と言えるメインキャラクターが1人抜けるが、格段に2の方が面白い。
今作はスピンオフだが、オリジナルの『9-1-1』とのコラボエピソードがある。
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