Larx0517

オナラブル・ウーマン 熱砂の女のLarx0517のレビュー・感想・評価

4.1
すさまじく面白い。
映画レベルのドラマ。
久しぶりの「拾いモノ」ドラマにワクワクする。

かなり複雑な話。
現在の話と並行して、過去が少しずつ語られてゆく。
イギリス、アメリカ、イスラエル、パレスチナ、各機関、それぞれの立場、思惑が絡まり合う。
ながら見などできない。

たいていは絡みついた糸をほぐすように情報を得ることで、話が分かるようになる。
今作は、情報を得ることで、さらに複雑さが増してゆく。
「見えている」部分が正しいとは限らない。

折り返し地点の4話。
「事件」については、それまでの伏線により予想はついていたので、不快感はあっても驚きはなかった。
しかしその後の、「血」を使った復讐、テロリズムには、戦慄を覚える。
特にイスラム教徒は他の宗教との「混血」を好まない。
それを逆手に取って、誰も望まない生きる爆弾を作らせ、相手を内側から蝕む。
まるでトロイの木馬のように。
ある意味自分の分身を自爆テロに使うようなもの。
よほどの憎悪がなければできない。
そしてそれはまた予測つかない形で、「威力」を発揮する。

中東問題を文字通り海の向こう側の話としか認識できない私達には、あまりに深い「憎悪」にただただ愕然として立ち尽くしてしまう。
もちろんこれはフィクション。
それでもこれだけ痛感させてくる。
あまりに自分が無知ではなく。「無関心」だったかと。
丹念に丹念に、ピースをひとつひとつはめてゆくことで、全体像が少しずつ見えて来る。
それが必ずしも心地よいものでなくても。
それでも見ずにはいられない。
これぞエンターテイメントの醍醐味。

映画レベルと書いたが、これだけの話を2時間程度に圧縮するのは、さすがに無理があるのも事実。
原作があるなら読んでみたかった。

ひとつ残念なのは、これだけ複雑な話なので、全話一気見ができれば良かった。
その代わりに、見終えた後の達成会は格別。
まるでひとつの時代を見送った気分。
全体を把握してから、もう一度細部を吟味しながら、ゆっくり見たい。
「無関心な世界」だけという意味だけでなく、ドラマの質という意味でも、少なくとも2度見の価値はある。
そう思えるドラマは多くない。
Larx0517

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