半兵衛

新・必殺仕置人の半兵衛のレビュー・感想・評価

新・必殺仕置人(1977年製作のドラマ)
5.0
「必殺仕掛人」から東山の「必殺仕事人」まで約30作品ある「必殺シリーズ」(単発のスペシャルまで含めると50ほど)、ファンは好きな作品をアイドルの「推し」のように熱をもっておすすめしてくるけど、その中でも外さない作品はやはり「新必殺仕置人」になってしまうのではないだろうか。

この作品の変わっているところは実質中村主水(藤田まこと)と念仏の鉄(山崎努)の二人が主役となっているところである。中村主水は婿養子でサラリーマン的な役人、対して念仏の鉄は毎日のように女郎を買って遊んだりと虚楽的な生活をしているアウトローと正反対の生き方をしており、そんな接点の無いはずの二人が織り成すドラマは藤田と山崎の熱演も相まって必殺特有のアダルトな世界観に深みを与えている。

そしてこの「新必殺仕置人」の最大の魅力は役者陣の掛け合いではないかと思う。藤田と山崎両者の時には緊迫感をにじませ、時には軽妙にはずしてきたりする掛け合いももちろん凄いけど、そこに中村嘉葎雄、火野正平、中尾ミエという芸達者な人たちが加わることでどこまでがアドリブか脚本通りか判別できない世界へと突入する。何しろ五人とも間合いが達者でシリアスな場面かと思ったら急にギャグっぽく演じてきたりと段急自在に演技をしてくるからね、そこに菅井きんと白木万里の戦慄コンビが加われば無敵としかいいようがない。特に後半になるといわゆる通行人やチョイ役のキャラ、そして鉄たちが住む長屋の屋根でフンドシ一丁で生活している通称「屋根の上の男」(演じるのは当時の火野正平のマネージャー)が話の関係ないところで活躍し、他にはない「新必殺仕置人」の世界を造り上げている。

そのほかにも作品の肝となる仕置人グループ「寅の会」、毎回工夫された仕置きのシーン、充実した脚本、そしてテレビのハードスケジュールを感じさせない監督やスタッフの手を抜かない演出…。こんな高レベルのドラマは中々ないと思う(強いていえば「相棒」の第4から第6シーズンに匹敵する充実っぷり)。

そしてもはや伝説となっている最終回手前の40話、寅の会の用心棒・死神が人間的な感情を手に入れると同時に破滅する「愛情無用」と最終回「解散無用」の完成度の高さ、いきなりこの話を観ないで1話から順に見ていくのをおすすめする。何故ならそれによってこれ以上無い楽しい時間から、それが終わりを告げていく切ない瞬間を肌で痛感できるから。
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