kazマックスグローバーレッド

ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路のkazマックスグローバーレッドのレビュー・感想・評価

3.6
H.P.ラヴクラフトのクトゥルフ神話にアメリカの黒人差別問題を取り入れたJ.J.エイブラムス&ジョーダン・ピール制作の1950年代アメリカを舞台にしたSFホラー。ラブクラフト作品ではお馴染みの怪物ショゴスも出てきます。

オクラホマ州タルサの大虐殺、黒人少年ボボことエメット・ティル殺害事件など実際に起きた出来事と宇宙・異次元などラブクラフト作品に出てくるコズミックホラー(宇宙的恐怖)を絡ませている物語。毎エピソードごとに当時活躍してた黒人活動家の実際の音声をナレーションに入れている試みも面白い。

全10話中で後半の5話辺りから徐々に話が面白くなってきて、特に第7話「私は私」ではこれから映画界で流行っていくであろうマルチバース(多元的宇宙)を扱っていた。この回では宇宙がテーマなので毎話恒例の実音声ナレーションは、自称「土星生まれ」の黒人音楽家サン・ラー。他には歌手であり初の黒人女性映画スターのジョセフィン・ベーカーも登場していた。

白人の皮膚を被った黒人の皮膚がベリベリ剥がれる「怪事」や中国の九尾狐の話「テグで会いましょう」もなかなか面白いエピソード。でもSeason1で打ち切りなんです。

実際のラブクラフトはあまり接した事のない黒人に恐怖を抱いていてその恐怖が彼の一連の作品に反映されている。
そしてこの『ラブクラフトカントリー』ではモンスターも出てくるけれど黒人にとってそれよりも恐ろしいのは白人というのが何とも皮肉です。未知のものによる恐怖から差別は生まれるってことでしょうね。