サンタフェ

新聞記者のサンタフェのレビュー・感想・評価

新聞記者(2021年製作のドラマ)
3.3
完全ドキュメンタリであれば評価したいが…。

劇場版が大変話題になっていた本作。率直な感想としては不完全燃焼に終わりました。

私がナルコスやゲームオブスローンズといった海外ドラマが好きなこともあり、フィクションのドラマ作品としては登場人物の「Noと言えない性格」「実力行使をしない/できない」理由の説明が不十分でした。というのも登場人物が物理的に退路を断たれているわけではないものの権力に逆らうことができないからです。

汚職に関与する人々が具体的に「何を」「どれくらい与えられ」「どれだけの恐怖で脅され」汚職への加担や黙認という選択を取るのかがほとんど描けていないと感じました。

結果として「日本社会がいかに生殺与奪の権を具体的にどこまで他人に握らせており、どこまでは自分が握っているかを厳密に認識せずに生きているのか」というのがよくわかるドラマ、と感じました。

いわゆるマフィアものや人種差別などといった社会問題ものの作品は、どんなに抵抗・反発しても物理的に暴力・法律・軍事によって阻まれるという絶望感があります。しかし本作は異なり、物理的には反抗できる状況でも自己犠牲の精神を選んでしまうのです。その文化が社会として集積するとどのような問題に発展するか、というのを結果的にはよく描いていたと思います。

最終話の綾野剛さんが演じる秘書官と妻との会話が象徴的で、お弁当屋でもやろうかなかと妻が語ります。そういう空気感なんですね。辞任や告発したら暗殺されるとか、即明日から食べ物にも困る、路頭に迷う、という状況ではない。今住んでいる高そうなタワーマンションに住み続けられるかは知りませんが、優秀な方なので人並みの生活は送れるでしょう。しかし、告発しないわけで、辞任するわけでもない。ただそれがイコール罪悪感も正義感もないことを意味している訳ではなく、自死を選び病気になるまで苦しんでしまうのです。

日本社会のそういった自己犠牲の精神を表しているという点では評価できると思いますが、なぜ日本人はNoと言えないかの描写は個々人の葛藤としても風土としても不十分に感じました。なぜ告発でもなく逃亡でもなく自死を選ぶのか。その風土を醸成するのは教育なのか、なんなのか。

もちろん現実を題材としておりかなりスキャンダルに突っ込んだ作品ですので、実態の描写で十分に評価されるべきなのかもしれません。しかしあくまでドラマとして観た際には上記の部分が非常に弱く、実名でもないためナルコスなどのように半ドキュメンタリーとして観ることもできません(ナルコスは実名ながらフィクションであることを強調していますが)。

媒体がNetflixなだけに海外作品との差を感じてしまい消化不良に終わりました。
サンタフェ

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