Kz氏

新聞記者のKz氏のレビュー・感想・評価

新聞記者(2021年製作のドラマ)
4.0
2019年映画版モチーフの加計問題を森友問題に換えて再構築した、「赤木ファイル」の物語。準強姦東京高裁認定の山口敬氏之は、今回は、現実の助成金詐取関連のみならず、電通安倍政権癒着の象徴にもなっている。きゃりーぱみゅぱみゅ「#検察庁法改正案」炎上沙汰も絡む。

映画版の主人公が韓国女優だったのは、「反政府」のイメージが付くことをことごとくのプロダクションが嫌ったからだと聞く。政権のメディアコントロールは、近松以来の芝居の肝、虚実皮膜を殺しにかかっている。反幕府権力のカーニバルと評する作家もいた「仮名手本忠臣蔵」の文化がある国だというのに。

本作は、スパイ小説チックな陰謀論展開だった映画版よりも、かなりリアルだ。にも関わらず、米倉涼子、綾野剛はじめ錚々たるキャスト陣なのは、Netflix作品だからだろう。グローバルカンパニーのサブスク配信は、抑圧の時代の「河原」となるのかもしれない。

物語は、赤木雅子さんの国への賠償責任訴訟で終わる。だが、現実は、国の請求全面受け入れで、近畿財務局文書改ざん追求は立ち消えとなってしまった。
赤木俊夫さんの甥、横浜流星の新米記者は、現実には存在しない。しかし、彼の存在が本作の希望だ。かつて寺山修司が試み続けた、虚構が現実を侵食するドラマが、本作で実現することを願うばかりだ。
Kz氏

Kz氏