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俺の家の話のkoheiのレビュー・感想・評価

俺の家の話(2021年製作のドラマ)
4.4
① 能とプロレスの舞台、息子の寿一と弟子の寿限無の関係性、認知症と学習障がい、血縁家族と後妻業。あらゆる要素が対比され、またねじれていく脚本の手捌きがうますぎる第1話。
「長男だから」ではなくて、もっとオリジナリティあふれる「継ぐ理由」がほしかった長瀬智也と、その彼が「長男だから」という理由で25年ぶりに戻ってきて、後継ぎになって金を掻っ攫おうとしていることに苦言を呈す西田敏行。本音のところはわからないけど、「家族」であることが生んだ悲しいねじれの関係。その間に降り立つファムファタール戸田恵梨香。血縁だけでは家族になれないし、血が繋がっていても介護ができるわけではない。むしろそこには対価が払われるべき肉体労働と感情労働があって、外から入ってきた専属介護士こそが入る隙に満ち満ちている。
さいきん『タイガー&ドラゴン』を観ていたのだけど、いい話風にまとまっていたものの最終話直前で突然竜二(岡田准一)が落語をしたいと言って家に戻ってくるところに言い知れぬ気持ち悪さを感じたりしていた。びっくりするくらいご都合主義というか、収まるところに(とくになんのドラマもなく)収まるところに。そこで(おそらくクドカンが力量的に)描ききれなかった竜二とどんちゃん(西田敏行)の父子の物語を、『俺の家の話』で15年越しに描こうとしてるのかもしれない。その関係性再構築のために後妻業の女がただ利用されるだけの話になると嫌だけど、第一話で正体を明かしているということはきっと面白い展開が待っているはず。「クドカンドラマはミソジニーすぎてひどいんですよ!」と言いながらもクドカンドラマが好きらしい女友達の言葉を僕もうんうんと聞いていたけど、その範囲内にずっぽりハマりながらクドカンがそこから脱却する姿を期待している。

②「本音」と「建前」がうまく同居したドラマだと思う。「父親を継ぐのに、長男だからではないオリジナルの理由がほしい」と言う本音も、結局「“そういうもんだから”介護をする」という建前もどっちも大事でどっちも介護や家族関係における真実だろう。「介護に対価なんていらない!」「家族だから当然だ!」と言えればどれだけ気持ちいいかわからないが、人間はそんな聖人にはなれないから。さくらが放つ「遺産目当てではないけど、もらえるものはもらう」も嘘のないうまい台詞だなと思う。そんな彼女を観山家は必要とするしかない。今後もひたすらに、「能面」や「マスク」を外した奥にある人間の「素顔」が、「本音」と「建前」とともに炙り出されいくはずである。
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③プロレスのマスクをした男が倒れた父親の病院に向かい、入り口で気づいてプロレスマスクを外してウレタンマスクをつける場面。うめぇーーー!となった。仮面と素顔、仕事と介護、コロナ禍とホーム、プロレス擬似家族と血縁家族をマスクという複雑な諸要素を小道具ひとつでいったりきたりしているのが巧すぎるなと。そんで思ったより長州力が出まくっていて毎度爆笑している。

⑥戸田恵梨香がはんぱねえええ。
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