うらぬす

僕らのままで/WE ARE WHO WE AREのうらぬすのネタバレレビュー・内容・結末

僕らのままで/WE ARE WHO WE ARE(2020年製作のドラマ)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

思春期真っ只中の自分探し、目的地の定まらない精神的放浪の中で、周囲の人や環境に影響を与え合い、前進と後退を繰り返しながらなんとか日常をサバイブするティーンズの青春が、これ以上ないくらいの洗練を以て描かれていた。ルカ・グァダニーノにこの手の作品を作らせたら右に出る者はいないのではと思う。
何が凄いって、群像劇の形を取っているのにステレオタイプに当てはめられるような登場人物はひとりも見当たらず、全員の言動が生々しいことこの上ない。しかも心に途轍もない余韻を残す演出は数え上げたらキリがないし、マッチョイズムの象徴のような米軍基地の、人工的に造り上げられた美しい街を舞台としているのも設定の妙。初の女性司令官(レズビアン)として赴任してきたのがフレイザーの母親で、そしてフレイザーはそういった軍隊から連想される規律や秩序とは正反対のカオス寄りの魅力を備えたゲイまたはバイで……といういささか盛り過ぎではという複雑さを最初から最後までコントロールして、見応えのあるドラマを展開し続けていて、本当に驚いた。
いちおうはフレイザーとケイトリン(ハーパー)が結ばれるというところに着地したけれど、それを以て彼/彼女のアイデンティティが確立した訳ではなく、というか本当の意味でアイデンティティを確立させることなんてきっと誰にもできず、right now right here(今この瞬間は)という留保付きでのWe are who we areなんだ、という綺麗なタイトル回収をしたのもお見事。
ブラッド・オレンジ、フランク・オーシャン、レディオヘッド、チャンス・ザ・ラッパーといった音楽が頻繁に流れてドラマに彩りを添えていたのも良かった。
シーズン2はたぶん作られないみたいだけど、登場人物たちの人生の続きを観てみたい気もするし、想像の余地を残してほしい気もするという不思議な感覚。ただひとつ言えるのは、語り継がれるべき傑作であるということのみ。