長内那由多

テッド・ラッソ 破天荒コーチがゆく シーズン1の長内那由多のレビュー・感想・評価

5.0
E1
アメフト監督がひょんな事からプレミアリーグのサッカーチーム監督に転身するコメディ。サッカー知識まるでナシでも臆することのない主人公テッド・ラッソのポジティブなエネルギーが気持ちいい。主演ジェイソン・サダイキスがありとあらゆる技を決めて笑わせる。

E2
毎朝テッド・ラッソが差し入れるクッキーを美味しそうに食べるオーナーのウェルトン女史。演じるハンナ・ワディンガムはどこかで見たことあるな…と思ったら、ゲースロ「Shame」でお馴染みセプタ・ユネラじゃん!いやー、いい女優だね!

E3
ある思惑からテッドを招聘したオーナーだが、シリーズ冒頭から既に彼に魅了されており(なんせ毎朝の手作りクッキー攻勢)、ドラマの枷としては弱く、プロットホールとなっている。そんなことはどうでもいい。テッドが次々と周囲を魅了していく姿が本作最大の快楽なのだ。

E4
「若さを楽しめ」に対する「年の功を楽しめ」。ベテラン選手ロイ役のブレット・ゴールドスタインが口は悪いがプロフェッショナルといった風情でいい。堂々として見えて、実は自己肯定できなくなっていたレベッカをテッド、キーリーらが支える連帯も気持ちが良い。

E6
サッカーバカがホントにバカって演出に吹き出す(だって自分の名前を連呼しながら走ってるんだものw)。サッカー選手役の俳優がみんなちゃんとサッカー選手に見えて凄い。時に俳優以上にカリスマチックで、でも本物の役者には見えない、というリアル。

E7
60年間黒星の天敵相手に萎縮気味のチーム。ラッソは怒りを解き放ち、ありのままにと説く。ジェイソン・サダイキス、ハンナ・ワディンガムの熟練ツートップによる素晴らしいパフォーマンスが心揺さぶる。まさかセプタ・ユネラの“レリゴー”で泣く日が来ようとは…。

完走
ラッソのポジティブ思考とkindnessが何とも気持ちよく、鬱々とした時代の空気にマッチした。落ちこぼれチームが逆転…という定石をひっくり返したラストだが、実はクソ野郎ジェイミーのパスに大いなる達成がある。楽しかった!

主人公テッド・ラッソは超ポジティブ思考、素晴らしいマネージメント力を持ったカリスマ監督で、周囲の人々の心を捉えていく様はほとんど聖人の域。そんな彼だからこそ、「ついていけない」と妻に去られる姿が僕にはとてもリアルに思えて、愛さずにはいられないのである。

究極のヒューマニストであるテッドの人物造形が素晴らしい。マネージメント論としても最高のテキストだと思う。悩んでる人はぜひ。明快で、日本に足りないヒューマニズムが満載。
長内那由多

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