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六畳間のピアノマンのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

六畳間のピアノマン(2021年製作のドラマ)
4.7
4人の主人公、そして彼らをめぐる人々の人生が、「六畳間のピアノマン」に導かれるようにからみあう。ひとりじゃない、離れていてもつながっている、人生の不思議で素敵な化学反応。ビリー・ジョエル「ピアノ・マン」の舞台は名もなき人々が集まるバー。客たちの唱和を思わせる「今夜はメロディが欲しい気分。ピアノ・マン、君が僕たちを元気づけてくれ」という歌詞。そんな「ピアノ・マン」を動画投稿サイトで歌う、「六畳間のピアノマン」と名乗る一人の青年がいた。彼の歌声は、やがて周囲の人々の心に響き、それぞれの人生は気づかぬうちに交錯していく。再び歩みだす先に光がさす、4つの物語。
派遣社員の村沢憲治(加藤シゲアキ)の職場では新人の永津(森永悠希)へのパワハラが常態化している。8年前、村沢と夏野(古舘佑太郎)、大友(三浦貴大)は上河内(原田泰造)のパワハラを受けていた。夏野は楽しく歌う動画「六畳間のピアノマン」を残し事故で亡くなってしまう。以来他人と関わらないように生きてきた村沢だが、苦しむ永津を前に夏野を救えなかった過去がよみがえる。そんな村沢に六畳間のピアノマンの歌声が、背中を押す。
夏野泰造(段田安則)は退職の日に、偶然上河内秀人(原田泰造)を見かける。8年前に事故で亡くなった息子の誠(古舘佑太郎)にパワハラをしていた憎い相手だ。人に優しくと育てたことが、パワハラに耐えられない弱い人間にしたのではと悔やむ泰造。しかし警察官の脇見(細田善彦)、誠の同級生の都(福田麻由子)ら、若者たちとの関わりで変わっていく。誠が「六畳間のピアノマン」として楽しそうに歌う動画を見た泰造は、再び生きる気力を取り戻す。
上河内秀人(原田泰造)は工事現場の作業員。すべてを失った彼は、芳江(麻生祐未)が運営する子ども食堂に支えられている。8年前、夏野誠(古舘佑太郎)にパワハラをした上河内は、誠の父の泰造(段田安則)に再会し衝撃を受ける。一方子ども食堂に通う幼いカズト(又野暁仁)はビートルを三台見たら願いが叶う、と一生懸命。父親がいないカズトを思いビートル探しを手伝う上河内。居酒屋を開きたい真治(上地雄輔)も加わって、3台のビートルを探し当てた時、ささやかな奇跡が起きる。
有村美咲(南沙良)はプロの歌手を夢見る女子高校生。もう一つの顔は地下アイドルのミクリだ。心の支えは更新が止まった動画「六畳間のピアノマン」。孤独な美咲はピアノマンにメッセージを送り、励ましの返事に驚き喜ぶ。マネージャーの吉田(木下ほうか)に過剰なファンサービスを求められ、大人に失望する美咲。しかもピアノマンつまり夏野誠(古舘佑太郎)が既に亡いと知り絶望が深まる。そこに大道芸人の大友(三浦貴大)が「ピアノマン」に合わせて、美咲にエールを送るようにパントマイムをする。
安藤祐介の同名小説をドラマ化。
パワハラと過重労働に苦しみ事故死してしまった夏野誠。
もう1つの顔は、「六畳間のピアノマン」というYOUTUBER。
彼が、残した歌声は様々な人々を繋いで勇気づけていく。
夏野を救えなかった悔いを引きずって派遣社員として人と関わらず生きてきた村沢賢治は、勤め先でパワハラにあった新入社員を救い社会労務士を目指す。
夏野の同期の大友は、勤め先のパワハラを暴露した後、「笑いで人を笑顔にしたい」と大道芸人を続ける。
「息子を優しく育てたのは間違いか?」と悩む夏野の父は、息子の友人たちから今まで知らなかった息子の顔を知り、生きる気力を取り戻す。
シンガーを目指す美咲、夏野たちの行きつけだった居酒屋チェーン店の店員だった真治、「六畳間のピアノマン」が彼らを繋いで生きる支えになっていく奇妙な縁を結んでいくオムニバスドラマ。
パワハラなど社会の理不尽に苦しむ時、自分は一人で苦しんでるように思える。だけど、前を周りを見てみれば、必ず自分の苦しみに耳を傾けてくれる、味方になってくれる人が必ずいる。
だから苦しんでる人を見たら、1人にしちゃいけない。
そんな大事なことを、教えてくれるドラマでした。
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