深獣九

心霊マスターテープの深獣九のレビュー・感想・評価

心霊マスターテープ(2020年製作のドラマ)
3.5
令和のモキュメンタリーでは最高峰のひとつ『フェイクドキュメンタリー「Q」』の寺内康太郎監督が放った新しい映像体験。現代の「心霊映像界のアベンジャーズ」が結集し、怪異の正体を解き明かそうとする物語。日本で最初に製作された、幻の「心霊ドキュメンタリービデオ」。その噂を聞いた猛者たちが、それを入手しようと奔走する。

怪異はもちろん、それを追う製作スタッフたちが主人公であるというところが、本作では斬新だ。とかくこの手の映像作品は、心霊スポットを訪れてきゃあきゃあわぁわぁするだけ、という印象が強い。ジャンスケ中心で視聴者をビクッとさせてなんぼ、という考えが色濃いように思える。だがその裏では、心霊に向き合う漢(女も含む)たちが、本当に怖いビデオを作りたいと真剣勝負で向き合っている。時には対立したり、バチバチと争うシーンもある。ただの色物ではないのだ、こんなに真摯に取り組んでいるのだという思いがあふれ出ており、伝わってくるのだ。
そして携わったほぼ全員が酷い目に合う。リアルだ。とても良い。

もちろんモキュメンタリーではあるが、それを超えて鑑賞者も、思わず真剣に対峙することとなる。なんと素晴らしい体験だろう。あえて言葉を選ばずに言えば、全6話を観終えたら「素敵に騙された」とため息を漏らすに違いない。

また、怪奇現象の原因解決がない余韻エンドを選ぶこともできたはずだが、本作では幻のビデオを探し出し怪異の正体を暴き、きっちり怖オチにしている。好印象である。いいものに出会えた、と思う。『フェイクドキュメンタリー「Q」』の寺内監督さすがの仕事である。

アラやツッコミどころ、大げさな芝居、予定調和を指摘するのは野暮である。この手の作品はモニターを飛び越え、私たちもスタッフの一員となった気持ちでどっぷり鑑賞するのが正しい作法であろう。
そしてシーズン2もあるようなのだが、なんといま巷で大ブレイク中の大迫茂生さんと久保山智夏さんも参戦するようだ。まさか工藤と市川? 胸熱すぎる。明日の早起き決定だ(今夜は眠い)。楽しみすぎて眠れなかったらどうしよう……。
深獣九

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