『巨匠マイケル・マン × ヤ◯ザ = 極上の暗黒東京ノワール。ビンジ必至のサスペンスが連続するドラマシリーズ』
HBO Max作品に、WOWOWが共同制作として参画して作られた本作。
WOWOWでの配信当初から話題になっていたが、ついにNetflixで配信開始したことでさっそく鑑賞。
この手のジャンルにおけるトップランナーであるマイケル・マンを中心に据え、新進気鋭の日本人映画監督・HIKARIなどもエピソードを担当したドラマは見応え十分、一気見してしまった。
1999年、東京。
ネオンがギラつき、人の活気と欲望が渦巻く世界有数の大都市が舞台。
歓楽街と裏の世界を牛耳るヤ◯ザの暗躍…
それを暴くことに取り憑かれた外国人新聞記者
大事件を避けるため、持ちつ持たれつの極限の緊張状態を維持しようとする警察
彼らが繰り広げる濃厚なサスペンスドラマだ。
エピソード1から、マイケル・マンによる引き締まった語り口と、重みを感じさせる映像に惹き込まれる。
加えて、さすがのWOWOW共同制作
日本語の扱いも抜かりなく、日本人がカタコトで喋るといった興をそがれるシーンはほぼ皆無。
安心してドラマの世界を堪能できるつくりになっていた。
そして、本作の魅力を押し上げているのが、役者陣であることは言うまでもない。
全員の顔が、本当にいい。
圧倒的な”顔力”が、全編にわたって満ち満ちている。
・主演のアンセル・エルゴート(ジェイク)のあどけなさと深みにはまっていく様
・言うまでもない、日本が誇るアクター・渡辺謙の顔力
・ジェイクの同期2人の抜かりないキャスティングと、その渋さ
・菊地凛子の男社会における凛々しさ、その裏にある気丈な振る舞い
・タバコにまみれた伊藤英明の男臭さ
・これぞはまり役!な、生々しいホスト役の山下智久
極めつけは、本作のもう一人の主人公といってもいい、若きヤ◯ザ役の笠松将。
裏社会で生きることに葛藤を持つ彼の生き様。
それが、本作を単なる裏社会ものではなく、濃密なヒューマンドラマに高めていたことは間違いない。
本作然り、国内ドラマでは比類なきクオリティだった【ガンニバル】(22)。
両作ともに出演している笠松将は、間違いなくこれからを担う重要な役者だろう。
もう一点、90年代生まれの自分には、
本作(1999年~)で全編にわたってかかる音楽も、見どころならぬ”聴きどころ”であった。
懐かしい往年の名曲たちが惜しげもなく流れるため、否が応でもノッてしまう。
・どんな手を使っても闇を暴き、自らの成果を出そうとする新聞記者
・持てる裏の力を行使して生きるが、カタギの葛藤を持つヤ◯ザ
そのどちらも、私たちと同じ人間である。
賢い新聞記者は、NIKEのDunkを履き、「BAPEのスニーカーがイカしている」と言う。
金と権力を持つヤ◯ザはBAPEのスニーカーを見せつけ、「NIKE Dunkをパクりのshitだ」と言う。
賢い新聞記者は、Backstreet Boysの名曲に「いいね!」と言い、「'N Syncが本物だけど」と勧める。
金と権力を持つヤ◯ザは、「'N Syncなんてへなちょこ」で、「セ◯クス表現を歌詞に出すBackstreet Boysこそが本物だ」と言う。
物知りも無知も、関係ない。
それぞれの信念がぶつかり合えば、(それが最高でも、そして最悪だとしても)間違いさえ正解になる。
この世界も同じである。
『I Want It That Way』をふたりで熱唱するシーン
『Tearin' Up My Heart』がクラブで鳴り響くシーン
…こんなん惚れてしまうわ!(久しぶりにしばらく聴き狂ったよ)
静かに、それでいてたしかに、ヒリヒリと熱を上げていく人間ドラマ。
ドラマにギアがかかり、そしてそのギアさえもカオスに吹き飛んでいく展開。
ドラマお得意の「ここで終わる!?」という幕引きまで許せてしまえる、シーズン2もいっそう楽しみなドラマシリーズがここにあった。
▼邦題:TOKYO VICE
▼採点:★★★★★★★★☆☆
▼形態:ドラマシリーズS1(全8話)
▼鑑賞方法:ストリーミング鑑賞(Netflix)