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TOKYO VICEのrayconteのレビュー・感想・評価

TOKYO VICE(2022年製作のドラマ)
5.0
巨匠マイケルマンが手掛ける、1999年の東京を舞台にした犯罪サスペンス。
「ブラックレイン」のような刑事とヤクザの攻防を描き、アンセルエルゴート扮する世間知らずの新人新聞記者が悪と交わって次第に大胆になってゆくシナリオは「トレーニングデイ」のよう。
また〝外人〟としてのアメリカ人の扱いは「ラストサムライ」に似ている。

日本のスターたちが名を連ねているのだが、見どころはそこではない。
恐らくこれまでで最も高い再現度で描かれた「90年代の東京」の景色が素晴らしい。
特に、細部の再現度が非常に高い。
街角の看板や、アパートやビルの内装、店でかかる音楽、今ではもう消えた小さな「たばこ」の自販機…
東京という街を大きな枠で作り込んだ作品はあっても、これほど緻密に「生活」を再現した作品はなかった。
おそらく、かなりの資料を元に研究したのだろう。
従来の作品では街並みはリアルでも「その職業の人はそんなとこ住めないよ」とか「クラブでそんな音楽かかんないよ」とか、そもそも日本語が変だったりとかの目立つツッコミどころが台無しにしてきた部分が、この作品では見当たらない。
居酒屋のシーンで店内BGMに当時のトップチャートのロックバンドが流れている点などは、地味ながら今まで洋画では再現されていないニッポンの風景だ。

シナリオには真新しい所がないものの、さすがマンといった魅力的なキャラクターが揃っている。
潔白な善人も漆黒の悪も存在しない人間味溢れるキャラクターたちは、マンの名作「ヒート」好きにも必ず刺さるだろう。
でも、いくらなんでもそこで終わるのはヒドイよ…というとこでS1は幕切れ。
S2製作は決定済みらしいけれど、せめてミニマムな部分でもいいから締めはほしかったよ…
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