ルイまる子

TOKYO VICE Season2のルイまる子のレビュー・感想・評価

TOKYO VICE Season2(2024年製作のドラマ)
5.0
めちゃくちゃ面白いです。超ハイクオリティ全ての点で。これを上回るドラマがあるだろうか?多分『Shogun 』と同等かそれ以上。この作品は映画以上の映像美、描写の細かさ、日本の任侠の世界や警察内部の問題など、またそれ以外の多岐に渡る日本特有の社会問題も網羅し、決してよくあるアメリカが作るニセモノの日本ではなく、リサーチも行き届き、わかりやすくも先の読めないストーリ展開となっている。そしてなによりも役者陣の豪華さが更にすごいハイレベルに押し上げております。めちゃくちゃ俳優の層が厚い。もう、どんな登場人物のストーリーも見応えあるし、人物背景が細かく描かれていてセリフも書き留めたくなるほどグッと来るしで、それぞれのキャラクターへの感情移入がハンパない!90年代が舞台だが、シーズン1はヤクザの借金取り立てが主なテーマだ。シーズン2はまた経済ヤクザへの時代の移行期の話で義理人情vsリアリティっていう部分も面白い。

もともと私は「仁義」が好きで、儒教の世界が好きだから任侠モノが好きだ。しかしインターナショナルな背景もあるので、日本の分厚い伝統やカルチャーの壁を、凄まじい努力と情熱でかつてないほどヒョイと超えてくれたアメリカ人青年に心底感動したし、彼の成長物語として見ても感動的だ。最初はわがままで自分の思い通り行動し、失敗したり周りに迷惑をかけたが、段々と我慢する事を学ぶ。ホントに主役のアンセル・エルゴートは短期間の勉強でよくここまで?達者な日本語力をつけたよ!なにより日本人の感覚が身体にスッと入ってる感じがする。発音がめっちゃいいのは耳がいいからかな。

また、私が夢中になっている、笠松将演じる千原会の組員、佐藤がものすごくいい!「佐藤」という名前を聞いて、まず思ったのは『ブラック・レイン』の松田優作だ。オマージュかな、偶然かもしれないが、とても優作と重なる部分がある。有名なシーンがあるのだが、佐藤は、実はアメリカが好きなやつで、バスケットシューズやらリーバイスやらにも詳しい。バックストリート・ボーイズのファンで、主役の新聞記者ジェイクと喋るシーンがたまらなく純粋で好きだ。笠松将という俳優初めて知ったが、佐藤の役そのものというほどにハマっている!まずは、スタイルが良い、所作が上品、表現力が豊かで、考え込んだり怒りをためてる顔と笑った顔の落差がもおおおお!惚れてまうやろ!になります。黙ってても色んな思い全部が全身から空気のように放出するような演技力だ。最初は若い組員として、しかしどんどん重要な役になる。海外で佐藤が爆発的な人気で、皆が異口同音に笠松将を絶賛している。ある英語のSNSで見たら、この人が主役なんじゃないか?という意見があった。Sato is trying to deal with honor-before-reason boss, crazy co-workers and arrogant foreigners. という記載があり笑ったが、その通りな気がする。佐藤が彼の周りにいる厄介な人たちをなだめながら付き合いう物語である。
メンツを何より大事にする論理崩壊してるヤクザの幹部、
気の狂った同僚、
自分勝手で偉そうな白人たち


バイオレンスが多いが、任侠モノ、刑事モノ、好きな人は絶対ハマるドラマだと思うので超オススメします。このドラマが動画配信サービスで気軽に見れるようになればもっと人気出ると思うのだが、今のところシーズン2はwowwowのみなので、視聴出来てる人はそれほど多くなさそうですね。

最後に好き過ぎて書きたいので勝手にランキングをつけます。

【好きなな登場人物】
1 佐藤、笠松将
2 先輩記者、菊池凛子
3千原会の親分、菅田俊
4 主役のJake
5 ヤクザの戸沢
6 戸沢の愛人みさき
7 同僚親友のTintin
8 S2から登場する片桐の上司、真矢みき
9 仁義がない新しいタイプのヤクザ葉山
10 建築家の大野、日本のインテリ誠実ガイ
11 後半からは戸沢の正妻がかっこいい、渡辺真起子
12子役の大ちゃん

【若干不満な点ネタバレあり】大ちゃんで思い出したが、佐藤が初恋のサマンサからエリカというシングルマザーに乗り換え?たのか(付き合ってたのか、送り迎えだけかは定かではないが)、佐藤という純粋な男が複数の女性を好きになるのは違うと思った。彼は一人の女性にのめり込む方がいい。また、クラブでサマンサが歌う姿を見てジェイクと佐藤が一目惚れするシーンは、(シーズン1)、音痴過ぎて少々お笑い場面になってしまった。また、私のように古い人間からすると、ヤクザになる=孤児など可哀想な生い立ちが通常のラインなのだが、佐藤は平凡な両親のいる家庭出身だ。昔は父に愛されて期待も高かった。弟はお兄ちゃんが大好きというのがちょっと解せなかった。キチガイヤクザの窪塚は面白かったが、この人に関しては人生の背景がよく描けてなかったのが少し残念。山Pたちのホスト窃盗グループについても、一応山Pの家に乗り込むのが布石回収となるのか。短い場面で、彼がTVの様な派手な装飾品を持ってなかった場面で、彼も又騙されたねかと想像できる。consequences を語ってたのかもしれないが少し足りない。サマンサがモルモン教の布教で来日し、それがなぜかホステスになり店を持つのが夢になった経緯もイマイチ理由がよくわからなかった。ちょっと描き方が荒い部分もあったが、時間の都合かもしれない。

【好きなセリフ】
Because you know, the more people who care about people, the better
ジェイクがお父さんの60歳誕生日会で皆の前でするスピーチ。父が教えてくれた事。「人を大切にする」それが大事だと

Don’t make promises you can’t keep
守れない約束はするもんじゃない

他にも沢山良い言葉があった。 

【日本特有の描写】
podcastで本作の著者Jake Adelsteinが日本人の「嫉妬の文化」について言っていたので、繋がった。日本には嫉妬という感情だけで人を殺す事がある。これは日本特有だ。シーズン1のラストに同僚が佐藤を刺すが、嫉妬から、である。これについても昨今のXで繰り広げられるある羨ましい人を叩きまくる行動、日本は度を越している。さて、シーズン2で佐藤は自分を刺した同僚を赦すが、その同僚はセカンドチャンスをくれた佐藤に一生忠誠を尽くす。これもすごくいい!

【好きな登場人物について】
5と6位は悪役だが、あーなんて重厚な、戸澤組長の谷田歩さん。愛人みさきを演じた伊藤歩、いいねー。圧倒的に余計な事言わず男に従うが頭がすごく良い。日本人を見慣れない目で見ると若いのだろうが、ジェイクよりずっと年上には見えた。しかし彼女の何層にもなる感情は見ごたえあったわ。

10位の建築家については、私も外人目線で日本人を見てる部分があるので、言いたいことよく分かる。彼の様なインテリで優しく、悪と向き合っても相手を断罪せず、お互いに傷つかない着地点を見つける頭も心もスーパー良い日本人が居る。他国ではなかなか出会えない。しかし矢張り見通しの甘さから死ぬ事になる。

2位の菊地凛子。存在と演技力が圧倒的。そこに居るだけで心揺さぶられる。間違いなくジェイクの心の支えだ。視聴者も皆好きになる存在だ。S2でなんと恋人が?仕事以外の生活が出来て良かったが最後え?あのクソ弟を選ぶの?と唖然。しかしラストが良かった。

3位に輝いた菅田俊おじいちゃんが、敬意を表するために英語で話させてくれという、かすれた声で流暢な英語を話す姿、佐藤への愛ある眼差し、本当に大好きだったわ〜
ルイまる子

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