こたつむり

マークスの山のこたつむりのレビュー・感想・評価

マークスの山(2010年製作のドラマ)
3.5
★ キラキラとした光に魅せられて
  細い線に身を預けた
  飛び散る赤 滲む風景 
  サヨナラも言えずに 

合田警部補シリーズ第1弾。
時系列として、本作のほうが『レディ・ジョーカー』より先なんですね。話は繋がっていないので、どちらを先に観ても問題ないのですが、やはり順番に楽しんだほうが良い感じでした。

と言うのも、本作は合田警部補が主人公。
対する『レディ・ジョーカー』は柴田恭兵さんが演じる城山社長が主人公。合田警部補の影が薄いので、本作で立ち位置を把握したほうが物語を深く楽しめたと思います。

それに警察は伏魔殿…。
功名心と派閥争いが絡み合った謀略の渦…。
そこで青臭い理想を貫くためには泥水を啜る覚悟が必要…。そうっ…覚悟だっ…!「正義は必ず勝つ」なんて幻想に囚われない覚悟だっ…!

…と某漫画風な台詞が言いたくなるほどの熱量。それは本作のほうが上でした。ちなみに警察の中では主人公よりも、甲本雅裕さんが演じた同僚と袴田吉彦さんが演じた部下が好きです(合田警部補はちょっとクサいんですよね…マークスの意味に気付くところとか)。

それと他にも実力派が勢ぞろい。
邦画が好きな人ならば、思わず舌なめずりしたくなるレベルです。石橋蓮司さん、山崎一さん、小日向文世さん、佐野史郎さん、小木茂光さん、大杉漣さん…おう。激シブなオヤジばかり。うほ。

また、物語の盛り上げ方も流石でした。
特に音楽の使い方が相変わらず見事ですね。
映画もそうですが「音楽を制するものは物語を制す」と言っても過言ではないのです。

ただ、あえて難を言うならば。
着地点の手触りは賛否が分かれそうなところ。
折角、全5話250分を掛けてたどり着いた結末ですから、もう少しドラマティックでも良かった気もしますが…まあ、硬質な手触りは本作の持ち味。これはこれでアリなんですけど。それに“あれ”は撮影するだけで大変な話…。製作陣の苦労を考えると大いにドラマティックです。

まあ、そんなわけで。
瞬間的な視聴率や、部分だけを切り取る意見に左右されない環境だから成立したドラマ。物語に“ビターな味わい”を求める向きには確実にオススメです(僕は砂糖入りも好きですけど)。
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