TaiRa

今ここにある危機とぼくの好感度についてのTaiRaのレビュー・感想・評価

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現代日本の風刺劇を唯一成功させたのが渡辺あや大先生という納得感。

渡辺あやが『ワンダーウォール』の発展として書き上げた大学ドラマが、ある種のプロテストアートとして完成したのが面白い。国立大学を日本の縮図として、ユーモアを軸に描く手腕の確かさに圧倒される。社会批評がクリティカルな風刺足り得るかどうかはユーモアの質に表れる訳だが、その点今作のブラックユーモアは大変素晴らしい。その中心にいる空虚な順応者=日本国民の代表者を演じる松坂桃李の好演は、この作品の成功に大きく貢献している。カリカチュアされた人物描写と裏側に潜むグロテスクな社会構造、主人公を体制側に置く感覚は『未来世紀ブラジル』的な空気感。ここに来て渡辺あやネクストステージといった感じ。鈴木杏の存在感含め、総長、理事たちの名優使いも巧み。何と言っても台詞の強さがあり、第1話の鈴木杏の台詞から最終話の松重豊の台詞まで、今必要とされる言葉の数々が重くのしかかる。人間の、または社会の在り方を問う核心を突きまくる言葉たち。コロナを描かずにコロナ禍の日本を描いた終盤エピソードも、他の作品と一線を画す。格が違う。
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