Morohashi

First Love 初恋のMorohashiのネタバレレビュー・内容・結末

First Love 初恋(2022年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

とってもよくできたドラマだった!
宇多田ヒカルの歌のイメージから遠すぎず、でも近すぎず。

晴道のイメージカラーは赤。也英は青。二色が合わさると紫。紫のライラックの花言葉は「初恋」。

かなり綿密に伏線が張り巡らされていて、それを解くのも面白かった!
たとえば第1話の冒頭、学校の中で也英が晴道に初めて会うシーン。
也英が「並木くんだよね? どこかで会ったことある?」と聞いて、晴道が妙に嬉しそうにするシーン。
これは2周目になってようやく意味がわかる。
他にも
・各エピソードのタイトルに散りばめられたプルースト効果への高まり
・コインランドリーでのシーンは「いやいや…」と思ったものの、最後まで見て納得
とか。
そしてなんといっても、第8話の終盤の展開はアツい!!

韓国ドラマで見かける展開だけれど、俳優陣の演技のすばらしさで特に気にならず。
そしてカメラワークがよい! 公園でタクシーを待つシーンとか、ARRI ALEXA Miniの能力をめいっぱい使った映像美は感動的。

そして小ネタがたくさんあるのも良い。
たとえば也英が模試会場に行く途中に読んでいる本はナボコフの「青白い炎」。これは宇多田ヒカルの愛読書。

一方で、若干納得のいかない部分もあって、たとえば唯一の性描写のシーンのせいで16+になっていること。これを削っても大して映画に影響はないだろうし、なぜあのシーンを?という謎はある。

けれど、じゃああれがなくって16歳以下が見られたとしても、16歳以下がこれを理解できるかっていうとかなり疑わしい。



〇「初恋」の意味、あるいは心の声に耳を傾けること

この映画の大きなテーマの一つが「運命」。
初恋はある意味運命だけれど、多くの人が初恋を諦めている。
つまり、必然的に世界の大半の人は恒美である。
それなのに恒美に感情移入をあまりしなかったのは不思議。彼女がどこか、その運命ってものに抗うことを放棄してしまったように見えたからなのだろうか。

私は運命の人っていると思っている。けれど、それに気づき、その人を手繰り寄せることができるかは別問題だと思っている。
そのために、いつでも心の準備をし、自分を磨き、行動し続けなければならないと思っている。
だって、私たちは生涯の中で数えきれない人に出会い、影響を与え、与えられているのにそこから運命を選び取っているわけなんだから、その確率の低さって言ったらヤバい。

それに自分が運命だと思って選んだものが、実は運命じゃないパターンもある。
このとき多くの人は、自分に嘘をついて、運命をごまかそうとする。
そうやって心の声にふたをして、本当に好きな人を諦めたりする。
でも嘘をついてその場を切り抜けても、いずれ後悔すること私たちは経験上、知っている。


最後に、也英の母親が也英にしたことには納得しない人はいるだろう。
でも母親の境遇を考えれば、也英に同じように苦労してほしくないと願うことは自明のことで、医者はうってつけだったんだと思う。
だから母親を責めることは間違っていると思う一方で、やっぱり子供の人生の中から苦難を排除するような動きをすればするほど、子どもの人生の影響は大きくなってしまうと感じた。
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