こすけ

First Love 初恋のこすけのレビュー・感想・評価

First Love 初恋(2022年製作のドラマ)
4.3
やんちゃだが真っ直ぐな晴道と、守りに入るが用意周到な也英が織りなす、運命の初恋物語です。

とにかく、セリフの言葉選びが素晴らしく、セリフによる視聴者への問いかけやメッセージが多く散りばめられています。もちろん、普段の何気ない会話にもそのセンスの良さは表れていて、この時代に生きた少年少女を取り巻く家族の物語としても、出来が良いです。


さて、これからはネタバレありです。Netflixを使っている人はこの先を見ることなく、再生ボタンをポチッとしてください。




正直、也英の事故で記憶を失った展開は日本だと多いタイプの作品ではないかと偏見ながら勝手に思っていました。しかし、そんな使い古されたと思われた展開でも、現代の歴史において重要な震災や、ウイルス疫病などの視聴者からしたら"リアル"な出来事が混じっていることで、そしてそれについて多くを語らせないことで、新しいリアルが作られていると感じました。まるでその世界というものは存在しているのだと思ってしまうような感じです。リアルに見せているのは俳優陣の演技力ももちろん必要な要素で8話のナポリタンのシーンは、とんでもなくリアルで自然で切なく、とても素晴らしい演技でした。


晴道は、コインランドリーストーカーというとんでもないことをしていますが、初恋という本能が彼を動かしているので、あまり深くは考えないようにします。笑
初恋というものは、時に人を狂わせるものでもありますが、人間形成にとても重要な事象であると思います。彼にとって、也英がどれだけ大きな存在で失った心の穴は大きかったことが伺えます。


そして、この作品をより深いものにしている綴と也英との親子愛と綴の成長についてです。まず、当事者なら当たり前にすることだと思いますが、綴のスマホの也英の登録名がちゃんと母になっているとこを見ると、俺を捨てたんだみたいな考えではなく、ちゃんとリスペクトと愛が存在しているのだと再認識しました。そんな親子が父に引き剥がされるときのシーンは、とても胸を締め付けました。綴の幸せを願うなら、自分で育てるよりも医者の父のもとにいた方がいいことなんて一番也英がわかってます。本当はそばで成長を見届けたいはずです。その相反する気持ちが満島ひかりさんは、ちゃんと表現されていました。


少し本編とは話がずれますが、紫のライロックの花言葉は、「初恋」だそうです。まぁこの作品なんだから当たり前だと思うかもしれないですけど、ちゃんとそこまで細かく作られているのだと感心しました。



基本的に、昔の出来事と現在の出来事を関連づけて、行ったり来たりするような構成になっていますが、パラレルワールドのようにそれぞれ時系列順になぞるように回想するのではなく、何かをきっかけとして、晴道がその特定の部分だけを思い出しているかのような、順番になっていて、それが幸せなシーンがただ幸せを感じるだけのシーンになっておらず、そこの中に哀愁が漂うようなそんな回想になっていました。
例えば、記憶がなくなって関わることをやめされられたシーンを見てるのに、その後小樽に二人で行くシーンはずるいです。父親に会いに行くことは、意外ながらも也英にとってプラスなはずの出来事なのに、この先に起こる一瞬の事故のせいで、それすらも忘れてしまうんだということです。

主要人物2人だけ出なく、周りの人物像をしっかりしていて、旺太郎さんの「逃げるな 野口也英!」はやっぱりすごいです。旺太郎さんもちゃんと成長して、切ないながらも強さを感じました。また、一番悲しい思いをさせられた恒見さんですが、堅物っぽいセリフがあるものの、ちゃんと人間らしい部分も随所に出ていて、最後に会いたい人は誰かを聞いた時の拳が震えていたのは心が痛みました。恒見さんと、旺太郎さんは、いつかどこかでそれぞれ幸せになってほしいと願うばかりです。


誰かにこれを紹介するならば、ただの恋愛胸キュンドラマではないことを強調すると思います。それぞれの人間らしさが複雑に絡み合った人間の愛を表現されている作品だと感じました。
こすけ

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