TakuoAoyama

First Love 初恋のTakuoAoyamaのネタバレレビュー・内容・結末

First Love 初恋(2022年製作のドラマ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ビンジ・ウォッチング。
(Silentは未鑑賞なので青い服、手話、コンポタ、夏帆、三角関係に注目して今度鑑賞してみたいと思う。)

ライラック(フランス語でリラ)の花言葉は「思い出」「初恋の香り」
Space OddityはDavid Bowieのアルバム名 
プルースト効果とは特定のにおいが、それに結びつく記憶や感情を呼び起こす現象

エピソード毎のタイトルが魅力的。

まさにfirst loveから19年後の初恋リリースになぞらえるように、20年以上もの月日をかけ、成就する2人の初恋の物語。恋だけでなく夢も叶えてしまうこれでもかという程完璧なハッピーエンドは、逆行性健忘、「きみに読む物語」ばりに手紙を捨ててしまう母、身分の違いから差別する姑等既視感あるありきたりなストーリーのようで、最後まで視聴者を飽きさせないのは役者陣の演技力と作中に散りばめられた素敵な台詞の数々のお蔭。

満島ひかり、佐藤健は無論、小泉今日子のやさぐれ母親演技も良かった。何より夏帆の唯一報われない恒美役が上手過ぎる。

若い2人のパートに寒っ!って思ってしまうのは大人になって汚れてしまった証拠。誰にでもいる忘れられない初恋の人を思い出しながら、改めてピュアな気持ちで見て欲しい。

いや、3.11東日本大震災やコロナ禍という時事を取り入れたのは、恋人だけじゃなく家族や親戚、友人大切な人のことを考えてというメッセージかな。コロナで病院や隔離施設の報道を良くやってた時に考えさせられた孤独のまま会えなくなってしまったら?それは本当に幸せ何だろうかと。距離が遠い、めんどくさい、色々な言い訳を付けて大切な人に会いに行けてない人達にふっと立ち止まって考えさせられる作品なのかなと思った。

北海道の自然と街の情景が美しい。カメラの手ブレ感やセピア調はエモさを出すための演出か。
携帯の暗証番号やガラケーのポチポチ音、送れずに増え続ける下書き保存。

タクシードライバーやマイ・マザー、大瀧詠一のロンバケ、沈むと分かってて泣けるタイタニックやアルマゲドンもまた然り。

也英が中国人留学生と暮らすアパートや外の情景の世界観はスワロウテイルやウォン・カーウァイ作品を想起する。

旭川常磐ロータリーを舞台にしたラウンドアバウト(環状交差点)。一時停止や信号機の無いその円周は自分の意志で方向とタイミングを判断しなければならないということを人生になぞらえてるのは洒落てた。踏み出せなかったらまたもう1周するしかない。

紆余曲折あれど事故で晴道のことを忘れてしまい、結婚し、子供を産み新しい人生を歩んでいた也英。
無線で盗聴し、砂漠の中から針を探し出し、まさに60億分の1の運命の再会を達成した晴道。

女性は上書き、男性は未練という構図。

それでも牛丼の並、木曜日の木、お天気の晴、国道の道、何故か体が覚えている手話。

也英と晴道の現在と過去が交差する。

切符の御礼、夢だったCAを横目に機内食工場で働く也英とその機内食を食べる晴道、環状交差点での再会、離れても幾度となく繋がる運命。

「強く輝く星を見ると、君をそばに感じます。」
「遠くの星を見ることって、もう存在しない過去を見てるってことになります。」

こんなに近くにいるのに晴道のことを覚えていない也英。自分が見ているのは過去の也英だということに気付かされる。

8ヶ月と3週と6日ぶりと健気に数えてた久し振りの再会デート。ズカズカ乱入し、彼氏を馬鹿にする町田先輩達からは心優しい也英もさすがに庇ってあげて欲しかった。

第8話、震災から7年付き合って結婚間近だった恒美に別れを告げ、也英の元に向かったのに、旺太郎に背中を押され、勇気を出して告白までした也英になぜ会わずに海外に旅立ったのか。大切な2人の女性を幸せにできなかった責任感と自信の無さの現れか。也英が泣きながら食べてたシーンが忘れられなくて、鑑賞後すぐにナポリタンを食べに行きました。

ライラックの香り、タバコのフレイバー、プルースト効果と成り得るエッセンスはたくさん散りばめられていたけど、最強の治療薬は匂いではなく曲だった。first loveを最後まで聴かせてくれるエンドロールの作りには頭が上がらない。

最終話では高校からではなく中学時代から也英に一目惚れしていた晴道とそれに追記する也英のサイドストーリーが描かれる。

全てを思い出し完全体で晴道に会いに行った也英。これまで晴道は赤、也英や綴は青だったが、ラストで也英は赤いニットのスカートを履いていた。

奇跡やばくない?ってこと。



親子や兄妹の家族のストーリーも盛り沢山。

出産前は毎日がクリスマス・イブで出産したら毎日がクリスマスって素敵な掛け合い。タクシー運転手の鏡。

父が也英にしてくれたように也英も綴に一番美味しいところを分けてあげる。

親娘揃って無意識に好きな青い服。

それでも息子への誕生日プレゼントが考えた末にAmazonのギフトカードにしたというのは、成長してしまった、自分の知らない息子を表現しており切ない。

「この世の地獄です。間違いと分かってて進み続けるのは。」
夜と昼。闇と光の狭間。かたわれ時のハーゲンダッツが染みる。

父からもらった万年筆で親権者変更届で息子の名前を書くシーンは嗚咽級。

晴道の妹優雨の結婚式も素敵だった。
「全ての出会いと別れは運命に導かれている。どんな出来事も人生においてはかけがえのないピース。世界を救うことはできないけど、せめて半径90cmの大事な人たちのことくらいは護れる男でいたい。世界一の妹と俺の大事な相棒が家族になる、最高の夜を祝って。」
妹の事故だけでなく、遠距離で守れなかった也英をも連想させる。



他にも丁寧なサイドストーリーがたくさん。

詩と也英がカラオケで仲良く歌うシーン。歌うのは「Automatic/宇多田ヒカル」
「七回目のベルで受話器を取った君。名前を言わなくても声ですぐ分かってくれる…」
宇多田ヒカルの母親の歌
「聞いてください私の人生/藤圭子」

また、ミラーリング効果を実践しちゃう濱田岳も最高。学生時代の木簡の研究からタクシードライバーになった経緯も良かったし、何より彼がいたから也英は思いを伝えることができた。「不運 不遇 受難と書いて占部旺太郎です」という台詞に笑った。

タクシー乗車客シリーズで有吉?又吉?も笑えた。



他にも素敵な台詞がたくさん。

「好きな食べ物は何ですか?」
「フレイバーと言いなさい。」
「子供ってね、自分で名前を引き寄せるんだって。顔見た瞬間に決まった。」
「いいねってボタンあったら1000回押したい感じ。」
「それが運命か知りたかったら飛び込んでみるしかない。」
「どうだったアベンジャーズ?」「あぁ、皆死んだ。」
「シャンプーとコンディショナーの間の時間って普通何考えます?そういうなんでもない普通の時間にね、最近ふって考えちゃう人がいて。」
「デヴィッド・ボウイはそろそろ着いてる頃でしょ。」
「分別なんてあると恋は死ぬ。」
「私信じてるの。それが本物なら必ず誰かに発見されるって。マルコ・ポーロが黄金の国見つけたみたいに。私はいつでも飛び出せるように爪を研いでついでに可愛いマニキュアも塗って、その時を待ち構えてる。大丈夫。君が全世界に黙殺されても、私はもう綴の音楽を見つけてる。」
「愛する人には自分が持てる一番きれいなものをあげたい。」
「飛行機にはV1って速度があるんだ。運命を分ける速度。この速度以下で助走してる間は、途中で離陸を中止できる。けどV1超えて走り出したら、何があっても飛ばなきゃなんない。人生には多分そういうジャッジの瞬間が何度かある。予測不能の風に立ち向かうのか、追い風を待って流れに乗るか。」
「マスカラと同じ。運命ってほんのちょっとのさじ加減で変わっちゃうんです。」
「その動かないはずのものに力を加えるのが、夢だったり、好奇心だったり、愛する人の存在だったりするんじゃないのかな。心に芽生えたどうにもならない欲求は時に岩をも動かす。」
「逃げるな!前を向け!息を吸って前進しろ!傷ついたって、みっともなくたって、人生は飛び込まなくっちゃ!」
「誰かをすごく好きになって、自分にはそう思える人がいて、生きてて良かったって思える、それはだいぶすごいことな気がするんです。その人がどこにいても、誰と何をしてても、それは変わらない。だかられで十分。」
「どう考えても100回諦めてもまだ好きでした、。な?例え誰かに恋してても、恋してる詩ちゃんごと好きです。」
「親しい人たちとの食事やおしゃべり。愛する人の肌の温もり。これまで当たり前に思ってたことが、実際そうじゃなかったことに気づく。そんな先の見えない世の中で、今改めて思うこと。いつか来るその日にまた会いたい人は誰か。」
「リスは食べる前にどこに隠したか忘れちゃう。でもこれには素敵な副産物があって、そこから新しいめが生える。忘れんぼのリスがいてくれないと、木の実は全部食べられちゃって森が育たなくなる。俺らは忘れないようにしないと。」
「パパはひどい男だったけど、あなたを私にくれた。それでお釣りが来るくらいよ。」
「出会わなきゃよかったんだ。もしあの子と会わなかったら、こんな気持ちにならすわに済んだ。」「そうだな、魔法みたいに素敵な出来事も、幸せで眠れない夜も、お前は知らずに済んだ。」
TakuoAoyama

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