三畳

きよしこの三畳のレビュー・感想・評価

きよしこ(2021年製作のドラマ)
4.0
同じく吃音を扱った映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の原作漫画を読んだ。とても良かった。その感想は今、追記してきた。

読み終わった瞬間にテレビでこのドラマが始まった。
作家の重松清も吃音だったんだ。

私は中学の頃、新潮文庫の夏の100冊を読めるだけ読んでいた。その中で唯一途中で挫折した本が、重松清の「ナイフ」。
他にもっと残酷な物語は読めていたのに、何かピンポイントで受け付け難い描写があった。
遡る事小学生時代の私は、学校生活のストレスでよく吐く子供だった。トイレ、電車、道端でも吐いてた。そのトラウマとリンクしたから、「ナイフ」の嘔吐シーンから先を読めなくなったんだと思う。

「きよしこ」がどんな話か知らなかったから身構えたけど、「志乃ちゃん」漫画の余韻が残った状態で観てみた。
なんのことはなく、とても優しさに包まれた物語だった…!

何が良いって「志乃ちゃん」と同じく、
”個人的な描き方(ある種の障がいをテーマに、こう乗り越えましょうとか周りの人はこう接するべきという正解を示すのではなく、あくまで主人公の持つ一面に過ぎなくて人生の中で他にも当然いろんなことがあるという描き方)、だからこそ普遍的”なところ。


会話はよくキャッチボールに例えられる。
主人公は野球をしているが、転がってきたボールを拾わないでいるうちに他の子が拾って返すという何気ないシーンは、「志乃ちゃん」のあとがきにあった

(引用)”「ここでこの発言をしたら面白い。でも吃ったらどうしよう…やっぱり言わないでおこう」と考えていると、別の人がそれを言う。そこでやっぱり場が沸いたりすると、自分も笑いながら、敗北感に打ちひしがれるのです。そんな感じで僕はどんどん内向的になって行きました。”

を如実に抽象化しているなと思った。
”心に罪悪感を積み重ねて行きます。”ともある通り…

そんな、子供の深い辛さを、自らイマジナリーフレンドによって癒すシーンは喉がぎゅっと切なくなった。ダンボのティモシーみたいな存在に私は弱い。

なので、幼少期パートが特によかった。

以降2,3編目はそこまで胸に響かなかったけど、
恋仲の女の子が離れたくない心から発した「東京に行ったら誰も助けてくれないんだよ」
という台詞にはなんだか考えさせられた。真実でもあると思うけどそんなのって悲しい。

困ったことがあったら誰にでも頼っていいんだよと言いたい。
できれば誰にでもではなく、私に頼ってねと言える自分でありたい。
(これは「5%の奇跡 嘘から始まる素敵な人生」(←クソ邦題で損してる良作)を観てから感じていること。)

重松清も、押見修造も、伝えたい思いがたくさん胸の中に溢れてきっと言えないことがたくさんあって、熟成されていったんだろうけどどちらも「物語を伝える」仕事で今多くの人を救っていることがすごい。
ドラマ的にはふつうだけどちょうど今日のタイミングで観れてよかった。
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