Morohashi

サンクチュアリ -聖域-のMorohashiのレビュー・感想・評価

サンクチュアリ -聖域-(2023年製作のドラマ)
4.5
一言で言えば強烈なスポ根モノ。
それも感動とかを前面に押し出さずに、ひたすら人間の醜い部分にもスポットを当てたリアルな話。
クリード2の努力パートをしっかりと描いた感じと言えば伝わるだろうか。

日本人であっても、実は相撲の世界のことはよくわかっていないと気付かされた。

もともと喧嘩に強いだけが取り柄だったなんでもありの力士、猿桜(一ノ瀬ワタル)が、金を儲けるために力士になる話。
力士=金持ちという認識はあんまりないが、実際に見ればそう言われる理由がよくわかる。
そして金を稼がなくてはならない理由がまたとっても切ない。
猿桜の実質的なライバルになる静内にしても、それぞれが背負うものがあるっていうのがまた燃える。


◯心得が先か、技術が先か
何かを教えるとき「心得」から先に教える人もいれば「技術」から先に教える人もいる。
どちらを先に教えるにしてもそれぞれの言い分はとても合理的なので、結果的にこれといった結論は出ていないが、私の感覚では結局のところ技術が育たないと心得は入っていかない、というか目を向ける余裕がないと思う。

なお日本のスポーツの世界において「強ければなんでもいい」が必ずしも正解でないのは「◯◯道」が人格の形成もゴールにしているから。

◯歴史に疑問を持つこと
猿桜も最初は歴史に楯突くけれど、最後はその歴史に敬意を払うことになる。
ただこのドラマのいいところは、歴史に楯突くところがとても客観的なところ。
なぜ土俵はいまも女人禁制なのか?
力士の品格って何なのか?
みたいな問いを与えてくれる。
歴史やしきたりは大事なのかもしれないけれど、問題はなぜそれが大事なのかを考えること。ここをないがしろにして「いいから守れ」とやっていることが、今の日本ではあまりにも多い。

◯俳優について
脚本はあの半沢直樹の金沢知樹。
ピエール瀧はやっぱりすごい俳優。この人が出ると、作品が一気に引き締まる。
一ノ瀬ワタルもまたすごい俳優。「宮本から君へ」の時はすこぶるイヤなヤツだと思ったけれど、猿桜が成長していく様子がとっても楽しみだった。

そして七海役の寺本莉緒がめちゃめちゃかわいい。タイプだった。一気にファンになった。

そして最大の見所は、実は成長しているキャラクターと成長しないキャラクターがいて、その対比が最後に決定的になるっていうところ。
国嶋(忽那汐里)も清水(染谷将太)も猿桜(一ノ瀬ワタル)も静内も成長しているけれど、犬嶋親方(松尾スズキ)や龍貴(佳久創)はこれといった成長が見られない。
猿桜のタニマチの村田も、金はたくさん持っているんだろうけれど、ひどく残念な人に見えてしまう。

人間は本来は成長する存在であって、やっぱり自分も常に進化を続けていきたいと思った。
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