りっく

サンクチュアリ -聖域-のりっくのレビュー・感想・評価

サンクチュアリ -聖域-(2023年製作のドラマ)
4.1
いい意味で分かりやすいキャラクター造形と単純明快な物語展開がドラマとして見やすく、忽那汐里演じる女性記者から見た角界を観客の視点と同化させることで、より取っ付きやすい作りになっている。

土俵は聖域であり、異常の先にある異世界である。モラハラやパワハラといったコンプライアンス的な尺度では測れず、格式や様式があって勝敗がある世界だ。その「聖域」という言葉がまさに現代社会を象徴するものであり、それをアップデートするのではなく、狂っていく中で異世界に足を踏み入れるという展開がいい。

どこか朝青龍を彷彿とさせるふてぶてしい主人公が、その伝統や歴史に風穴を開け、己を鍛錬することで己を革新し、トラウマと再び向き合うところでドラマは終わる。先輩力士の引退式で幕を下ろしている感はあるものの、正直1シリーズのドラマとしては不親切な終わり方ではある。

だが、ため息と舌打ちと悪態にまみれた土俵がやがて聖域へと変貌していき、その聖域に上がるにふさわしい心身の鍛錬をすることで変貌していく様はやはり美しい。相撲の基本中の基本である四股の重要性と、張り手の恐ろしさをこれでもかとまざまざまと植え付けた演出も逆に新鮮で良かった。
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