kyoko

初雪のkyokoのレビュー・感想・評価

初雪(2020年製作の映画)
3.8
ヨーロッパ映画を作るのに、もはや「難民問題」を避けては通れまい。

暖かな朝の日差しが差し込む部屋で、夫を、娘を、息子を、順番に優しく起こしていく美しい母。朝のルーティンには幸せが満ちていて、それが「難民収容センター」の一室であり、彼らが申請認定を待つ身であることなど、はじめは全く想像ができなかった。
フィンランド人の老夫婦やイラン人の同胞たちとの交流(あのバナナのくだりは本当に酔っぱらっているとしか思えない)、親友との冒険、初めての恋……待ち受ける運命を悟ってからその時を迎えるまでの愛おしい日々は初雪のように儚いけれど、彼らの顔に悲壮感は見えず、幸せなルーティンは変わらない。

監督自身、少年時代にユーゴスラビアの難民キャンプで過ごした経験を持つという。
デビュー作にありがちな、足し算に失敗したように見える部分もなくはないけれど、どんな境遇にあっても心根を腐らせない人たちを優しく見守る良作。
kyoko

kyoko