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ミスタイムのkyokoのレビュー・感想・評価

ミスタイム(2019年製作の映画)
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ヘルシンキオリンピックの選手村だったアパートの一室にはシルッカ・リーサという女性の私物がまるごと残されていた。その部屋を偶然購入した今作の監督が、それらから一個人の人生を紐解いていく異色ドキュメンタリー。
個人を対象にした作品は珍しくはないけれど、証言者が写真やフィルムや手紙といった「モノ」だけというのはあまりないかもしれない。

病気のせいで生涯子どもを持てなかったことはそりゃ悲しかったけれど、そのかわり夫や姪と世界中を旅した。楽しかったわあ。夫が死んだあとは友だちと旅に出て、90過ぎまで人生を謳歌した。入院したまま帰れなかったのは誤算だったわね。うっかり家財がそのままになっちゃったけど、葬式やお墓を自分で準備したことは褒めてほしいわ。ひとりで死んでかわいそうみたいに言わないでくれる?こっちでみんなと楽しくやってるわよ。てか、人の物使ってお寒い演出とかほんと勘弁。
……と、私が本人ならあの世から叫びたい。

「子どもを持つことは自分にとって重要なこと」と言い切る監督の価値観でもって、他人の心中を推し量ることに傲慢さしか感じられないし、どう見てもアクティブな人生を妙にしんみりさせる必要はない。

他の人のレビューを読むと、監督のティーチインに非常に好感を持った模様。
私もそのときに観ていればもう少し印象が変わったのかなあ。
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