ぶみ

母性のぶみのレビュー・感想・評価

母性(2022年製作の映画)
3.5
母の愛が、私を壊した。

湊かなえが上梓した同名小説を、廣木隆一監督、戸田恵梨香、永野芽郁主演により映像化したドラマ。
ある事件を、母と娘、それぞれの視点で描く。
原作は未読。
主人公となる母ルミ子を戸田、娘清佳を永野、ルミ子の母を大地真央、ルミ子の義母を高畑淳子、ルミ子の夫を三浦誠己が演じているほか、中村ゆり、山下リオ、吹越満等が登場。
物語は、予告編にもあるように女子高生が遺体で発見される場面でスタート、以降、前半はルミ子が夫と出会い幸せな家庭を築いていく姿が、ルミ子視点と清佳視点で描かれており、同じ事象であっても、それぞれ全く違う捉え方をしているのが、本作品の肝の一つであり、エンタメ作品として面白いところ。
後半は、ある事件をきっかけにルミ子一家が農家を営む夫の実家に移り住むこととなるのだが、何はともあれ、高畑演じる義母のキャラクターが強烈。
思ったことを全て口にするし、声が大きいしと言った態度は、口うるさいの一言では済まされず、また孫の授業参観に高そうな和装を着ていくのも、田舎の大豪邸に住む農家のステレオタイプなイメージと言えばそれまでだが、実際、私の幼少期には、程度の差はあれど、こう言った人が普通にいたのも事実。
そう考えると、原作がそうなのかもしれないが、本作品の時代設定について、映し出されるクルマやガジェット、はたまた学生運動がキーワードとして登場することから1970年代から2000年あたりを描いていることが、観ていて違和感があったものの、高畑のキャラクターを成立させるために、この時代を設定したのではと考えると、ある意味納得。
加えて、終盤まで、清佳の名前が登場しなかった展開も秀逸。
また、一つのシーンを違う視点で見せてくれる演出は、ジャンルは違えど、私のお気に入り映画の一つ、ピート・トラヴィス監督『バンテージ・ポイント』を思い出した次第。
実は、私の妻も結婚した当時、「母親が好きで実家を離れたくないくらい」と言っていたことがあり、今でも妻と母、妻と娘との間には、私が1ミリたりとも入り込めない雰囲気が漂っているのが母性なのかと考えさせてくれるとともに、登場するだけで全てを持って行ってしまう高畑の演技にMVPをあげたい一作。

愛能う限り。
ぶみ

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