B子s

母性のB子sのネタバレレビュー・内容・結末

母性(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

重いだけかと思ったら期待以上の作品でした。
何ひとつオーバーに語っていない。
まさに女性のリアルを恐ろしいほどに感じさせるお話で、ぜひ怖がらずに観て欲しいと思いました。


母娘は時にぶつかったり、お互いを想っているはずなのに信じられないくらい傷つけ合う時がある。
側から見ると、当て付けやわざとじゃないかと思うくらいにあからさまに。

母からと娘からの目線は大きくズレている事がある。
大きく"証言"が違うのは、こころが事実で無く、真実を捉えようとしてしまうから。だけど困ったことについつい一心同体みたいな錯覚を起こしやすい関係なのである。

ひたすら娘が可哀想に見えるストーリーだが、娘も娘で、クラスメイトを庇ったシーンで違和感を感じる。
庇った行動に対してではない。
しかしクラスメイトのマコちゃんは、不快感を覚えた。アンタが1番失礼だ。と。
それに対して物事を深く考え過ぎてしまう癖があるにも関わらず、娘は不自然なほどマコちゃんの気持ちには寄り添わない。と言うより、全く心に留めていない。
普通考えられない。違和感。
ついに、マコちゃんを守った話を母にしている姿は「あぁ、この子も。」と感じた。

一見、突き放される娘が可哀想に思うしその通りだが、もしかしたら事実は、母は首を絞めたのでは無く、抱きしめていたのかも知れない。
とはいえ、それは誰にもわからないのだけど、人の記憶の真実はこうも大きくずれるものであり、全くその通りなのだ。

最後母はまた娘になった。
妊娠した娘への言葉より、
自身をイビリ抜いた義母への言葉の方が人間らしく響く。
母のしあわせ。母の勝利。
なによりも母が執着したもの。

この作品の良いところは、
その生き方をけして否定していないところだ。毒親と一蹴していない。
しかしながら名前が呼ばれた時は衝撃。
あの瞬間まで、やはり娘はムスメという生き物の記号でしか無かったのだ。

片方、あるいは両方に共感する女性はすごく多いように思うし、
母娘の複雑な部分をこれだけ剥き出しにしているのに、ストンと腑に落ちた様な気になる。
女性特有の苦しみ、喜び、はがゆさなど、どうしようもない姿を淡々と捉えている。

「私たちの命を未来に繋げてくれてありがとう」
同じ言葉でも2人の温度差が凄い。
それで良いと思う。

そして、主演2人は勿論、キーマンになる高畑さんの演技力はみものです。

登場する男性陣はバランみたいな添え物でしかなかったが、女同士にフォーカスを当てたらそうなるよな。
旦那役の虚無演技も良かった。


そうとしか生きれない人間への愛がある映画だ。

観た後に友人ととても盛り上がった。

気づきのある良い映画でした。
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