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母性のRISAのレビュー・感想・評価

母性(2022年製作の映画)
4.0
ー 女には2つ。母か娘か。

湊かなえさんのミステリー小説が原作となる本作
初版は2012年ってことで、
約10年越しの映画化になる訳だけど
10年の月日を感じさせないテーマや物語で
改めて湊かなえさんの才能を痛感したな〜
(もちろん映画制作に携わった方々の技量もね)

物語としては、
母性という名の最大の愛を
一身に受け育ったルミ子と
その子供、清佳が一つの事件をきっかけに
それぞれの視点で展開されていく構成で。
(”告白”のときと同じような感覚かな)

原作は読んでいないんだけど、
本作ではこの“それぞれの視点で同じ場面を見る“
ときに感じる違和感にぞわぞわくるものがあるし
(子供に持たせるお弁当の中身とかね、、笑)
終盤で彼女がそっと話した
「女には2つ。母か娘か」みたいな台詞に
同じ女として共感するものがあって。

タイトル通り本作って正直“女”の話なわけで。
ジェンダーレスや多様性を強く主張される今、
もちろん男性が子供に対する深い愛もあるけど
妊娠、出産を経験したからこそ生まれる母性。
ってやっぱり女性ならではのものなのよね〜

ただその”母性“ってこの作品を観るまでは
絶対的にプラスな印象で尊いものだと
思っていたのにこの作品を観たあとでは
合法的な闇で閉鎖的な脅威に感じて。
(多くの人が考えつかない着眼点で、
だからこそはっとさせられたりぞっとさせる
湊かなえのダークさはやっぱりすごいよね)

少し話は変わってしまうけど、、
湊かなえさんがラジオで
「作品を作るときは共通して一つの問題を
突き詰めてしまった人の姿を描いている」
と話していて。
「私達は生きていて、
例えば人を殺したくなっても思いとどまったり
何か犯罪を犯しそうになっても制御するけど
制御をせずに突っ走ってしまった人から
得られる学びっていうものがあると思う」
「ただ物語を描くときは、
ひたすら突っ走っているキャラクターを
描きつづけなくてはいけないから、
ものすごく落ち込んだりもする」とも。

本作ではそれがきっと、
ルミ子の姿だと思うんだけど
新しい“母性”の正体を提示した物語に
その姿を体現した戸田恵梨香さんに◎
(今年には出産もされたそう、、)

正直出産を経験してない私からすると
この作品って恐怖でもあるんだけど、
ラジオのお話の通り、学びだと思って
良いトラウマに変換したいな〜
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