ある母と娘の不自然な関係性を取り上げ、「母性」とは何かを問いかける映画。
今この文章を書いていて思ったことだが、主人公の母娘を中心に登場人物の名前が作中でほとんど呼ばれなかった気がする。映画のテーマを感じ取ってほしいという製作陣の想いによるものなのだろうか、あるいはお互いの名前すら呼び合わない歪な関係ということなのだろうか。
この映画において男性の存在がすごく希薄。父親も空気に近い。母性を語るのに男はノイズなのだと主張しているかのようだ。そのせいで家庭環境がかなり悪く見える。
歪といえばあちこちが歪なのだが、特に歪に感じたのが母とその母（娘から見た祖母）の関係。一見優しい人だが、無意識なのか意識してなのか、自分の娘を自分色に支配している。そうして育った娘がさらに娘を生んで支配しようとしている。母性云々以前にそういう親子関係はいかがなものか。
あるいはそれは母性と関係があるのか。母性とは本能ではないと作中で主張されていたが、母性の発生は母親の影響が強いということだろうか。
なんとなく解釈すると、「母性」とは、親から与えられた娘としての立場から殻を破り、母親になったと自覚して子を愛する気持ちを心から持てた時に醸成される感情とでもいうのだろう。そしてその感情が芽生えるかは自分が娘として育ってきた環境に大きく依存する。
男性の私には完全な理解ができないが、母性という複雑な概念に焦点を当てる試みとしては面白かった。そんな映画。
