RYUYA

MAHOROBAのRYUYAのレビュー・感想・評価

MAHOROBA(2021年製作の映画)
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自分が作りました。

長文解説を以下に記載したので、レビューの参考になればと。











【裏話・全解説】

・緊急事態宣言(2021、年明けのやつ)で勤め先の歌舞伎町のバーが営業自粛になり、思いつきから店のiPadと100均のタッチペンで作り始め、半年をかけて1人で作った。

・着想は、家でダラダラしてる時に見た『キャストアウェイ』。「もしコロナを知らずに無人島にいた人が、今の日本に帰ってきたら何を思うのかな...?」と妄想したところからスタートした。

・着想はしたものの、物語の全体図を初めから用意するという一般的な作劇法はとらず、脚本も絵コンテも書かなかった。ワンカット描いては、それを編集のタイムラインに乗せて、流れで見て、「次はこう来たら意外かな?面白いかな?」と、また次のカットを探して...と進めていった。だから展開するにつれ、若干絵が上手くなっていってる気がする...。この作り方を選択した理由は、単純に自分を飽きさせないためというのもあるが、"役者のアドリブがない"という、全てを計画的に進めなきゃいけない「アニメーション」ってジャンルだからこそ、どうにか即興性を持ち込みたかったから。結果、当初は想定になかったオチになった。

・そのように、物語は非常に場当たり的だが、演出のルールだけは初めから決めていた。それは「起承転結の4パートで画面サイズやテーマカラーを変える」ということ。これは勿論『Mommy』や『ザ・ファイブ・ブラッズ』の文脈もあるけど、家で1人で作っていたからこそ、スクリーン映えするような演出を盛り込んだところが大きい。映画はサプライズの連続であった方が俺は好きなので、お客様が興奮する姿を想像しながら、そうゆう演出を軸に細かく組んでいった。

・今作がアニメ初挑戦(これまでは実写の自主映画とか撮ってた)となるが、これまで自分は落書き程度のイラストくらいしか描いたことがなく、動かし方すら分からなかった。そこで編み出したのが、GIFを一枚一枚にバラして、それをなぞるという手法。今作は、無数の作品のトレースから成り立っている。『シンプソンズ』や『リック・アンド・モーティ』から、『リトルマーメイド』、『クレヨンしんちゃん』からジブリ作品。"っぽい"カットが所々あるのはそうゆう事である。節操なくパクりまくりました。

・音楽に関しては、主人公の男が無人島に立ち、画面が広がるシーンで流れるやつだけGarageBandで自分で作った。あとは海外のサブスク制のフリー音楽サイトから選曲した。マジで1週間かけて何万曲も聴いて、歌詞のハマり方なども考えながら採用させていただいてます。劇版作ってそればっか流すのも悪くないけど、台詞もないワケだし、タランティーノとかスコセッシみたいなジュークボックス式の、自分が1番カッコいいと思う映画音楽の使い方というのを日本作品でやりたかったので。

・ラストの声優は俺の高校の同級生(素人)。まず自分が雰囲気で演じて、それをLINEで送って30パターンくらい録ってもらった中から採用した。

・「祖母に捧ぐ」というクレジットに関して。作中に祖母(俺のばあちゃんの写真をトレースしてる)を登場させたのは、単純に大好きだからだし、卒業制作で撮った映画で近所のじいちゃんばあちゃんのエキストラを30〜40人招集するという、製作総指揮ばりの動きで映画作りをサポートしてくれたという恩義、自分が続ける事の強いモチベーションを、いなくなった今でも毎日のように感じているからというのがあって。そして、ばあちゃんはお風呂場の"ヒートショック"という事故で死んじゃったのだが、そのばあちゃんが手を差し伸べて水から救ってくれる、みたいなシーンをやりたかった...とかなんとか、まぁ個人的な思いで記載している。

【主な影響元にある映画】

『キャストアウェイ(2000)』
→無人島モノの決定版として。MAHOROBAが出来上がってYouTubeに上げた時、テンションが上がってトムハンクスのTwitterに謎に直リプでURLを送りつけてしまったのはいい思い出。いつか観てくれないかな。ちなみに、今作のポスターをパロった看板を作中に忍ばせているが、まだ誰にもツッコまれてない。

『未来は今(1994)』
→コーエン兄弟の隠れ傑作。社長が身投げして椅子が空いたところにアホの新入社員を置いて取締役が買収を目論むというストーリー。「身投げ」や「仕事のできない男」というモチーフはここから取った部分が大きい。原題は"The Hudsucker Proxy"。

『PARANOID ANDROID(1997)』※MV
→レディオヘッドの言わずと知れた名曲、のMV。このアニメーションのゆるさとブラコメ感からはかなり盗んでます。"BOSS"のキャラ造形はほぼこれの丸パクリ。

『Brother(2000)』
→というかたけし全般。今更ですが、こんな丸々登場させるの絶対ダメだよな...。以上。

『AKIRA(1988)』
→オリンピックや現代編の東京の背景描写に関しては、今作を避けて通れないので思い切りサンプリング。やはり偉大。

『CLIMAX(2018)』
→ニュース映像の構図は今作から拝借。シネスコの中でスタンダードサイズもやれるってのがミソ。この映画を観た時、いつか絶対パクろうと思っていたが、時は案外早く来た。

『ファンタスティクMr.FOX(2009)』
→ギャスパー・ノエとウェス・アンダーソンみたいな、固定カメラの絵をあくまで基盤にする監督からの影響はとても大きい。シンメトリーの決め決めの構図って、並の監督なら「キマッたな」っつって長回しとかしちゃいがちだけど、ウェス君なんかは金かけた贅沢な構図でも物凄い速さでポンポン切って、ちゃんとテンポで見せるから素晴らしい。その考え方はかなり応用した。亀ちゃんが飛び降りて、社長室で暴れるシーンは本作の"あるシーン"をまんまトレースしてます。

『クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲(2001)』
→幼少期から影響を受け続けてきた、心の友、クレヨンしんちゃん。俺的に、日本で唯一ブラックコメディをやっているのがこのアニメ。それが日常に落とし込まれている素晴らしさよ。家族で自転車に乗っているシーンをサンプリング。

『ジェイコブス・ラダー(1990)』
→自分が最も敬愛するホラー映画。ラストのやりとりをサンプリング。ハッピーエンドとバッドエンド、そのどちらでもあるようなオトしかたになれたらいいなと思い、参考に。
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