まちゃん

マッドゴッドのまちゃんのレビュー・感想・評価

マッドゴッド(2021年製作の映画)
3.9
「スター・ウォーズ」「ロボ・コップ」「ジュラシック・パーク」など数々の名作を手掛けたフィル・ティペット。この視覚効果の巨匠が30年の歳月を掛けて完成させたストップモーションのアニメ作品。ストップモーション・アニメはデフォルメされた可愛らしい作品が多いがこの作品は違う。ガスマスクをした男が地下に降りて行く。そこは異形の怪物達が蠢く異様な世界。セリフが無く、観客は説明の無いまま強烈なビジュアル・イメージを浴び続ける。デヴィッド・リンチ「イレイザー・ヘッド」の悪夢シーン、デヴィッド・クローネンバーグ「ザ・フライ」「裸のランチ」などに勝るとも劣らないグロテスクさ。荒廃した文明の果てだろうか、錆び付いたガラクタの山、無機質な工場のイメージ。鉄と肉の融合は塚本晋也「鉄男」大友克洋「AKIRA」も思い出した。奴隷として扱われる人間、工場のベルトコンベアに乗せられて機械に潰された怪物。ドロドロとした血液、内臓や得体の知れない粘液が流れる様には生理的な拒否感を感じた。アウシュビッツでもあり、現代の虐げられた労働者のメタファーでもあるかもしれない。天才の狂気が塗り込められた地獄巡りだった。
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