『スパイナル・タップ』の奇才、クリストファー・ゲストのハリウッド風刺映画です。

マリリン・ハック（キャサリン・オハラ）は、あまりパッとしない経歴のベテラン女優。『Home for Purim』という1940年代の南部に住むユダヤ人一家を描く映画の「癌で闘病中の母親」役に抜擢される。

監督のジェイ・バーマン（クリストファー・ゲスト）は、奇怪な演出を指導するので、脚本家と争いが耐えないのだが、プロデューサーはオムツ配達ビジネスで富豪になった家の娘で、映画制作のことは何も知らない。このカオスな撮影現場リアルっぽい（笑）！

私は『スパイナル・タップ』で、自分が精通している「ロックバンド」という媒体を通してこのクリストファー・ゲストのオフビートな、面白いんだかなんだかわからないギャグに触れたので、好きになってしまってこの人の映画は結構笑えるのですが、全く面白くないという人がいても驚きません（笑）。

クリストファー・ゲストは「ロックバンド」「小さい街のシアター」「犬のコンテスト」など、エンタメ界ではあるけれどなんだかマイナーな、要するに「ルーザー」の生態を風刺して来ていたんですけど、今回はズバリ『ハリウッド万歳』という曲に乗せて、大御所ハリウッドの、でもやっぱり「ルーザー」の生態を風刺しています。

マリリンは、女優歴32年って言ってたから多分50歳くらいなんだろうけど、病気の母親役で、醜くメイクされたりするのがイヤだし、誰からも演技を褒められないのも気になる。それがある日、「見学に来ていた若い男の子が『ネットでマリリン・ハックがオスカーにノミネートされてもいいくらいの名演技だ』って書いてあったって言ってたよ」と言われ、めちゃ舞い上がる。

私達だと「ネットの記事？あんま信憑性ないなあ」と思うところだけど、マリリンはおばさんなのであんまりネットのことを知らず、自分のエージェントに調べさせる。

そしたら、映画は結構な評判で、旦那さん役のヴィクター（ハリー・シーラー）、娘役のキャリー（パーカー・ポージー）もオスカー狙えるのでは、って話になる。

ハーリー・シーラーは『スパイナル・タップ』でベーシストを演じた人！他の役もやってたんだ〜。パーカー・ポージーは結構有名ですよね。

で、この3人は映画のプロモーションのためにモーニングショーや、芸能エンタメショウ、若者のヒップホップ番組などに出演するようになるのだが、これがなかなか的を得たアメリカTV番組のパロディ！

娘役のキャリーが弟役の男優とリアルでは恋人同士ってのもあるあるだし、弟役の男優はオスカー候補じゃないことから、2人は別れてしまうってところもあるある。しかも、男優の方からじゃなくてキャリーの方が「私の方が評価されて、ヤキモチ焼いているでしょ？！サポートしてくれない！」と勝手に罪悪感を感じてヒステリーになって別れる！

マリリンは、何気に整形手術と豊胸手術を受け、トークショウに出た時は露出度激しいドレスを着ている。これもあるあるで、なんであんなカッコして出てくるの？って人いるんだよな〜。ちなみに整形した顔は、特にメイクでもなんでもなく、キャサリン・オハラが「変顔」しているだけらしい（笑）。

あ、そうそう、『Home for Purim』のPurim ってのは、ユダヤ教のホリデー？お祭り？かなんかなのに「ユダヤすぎるとアレだから」とタイトルが『Home for Thanksgiving』に変えられちゃったりって「ホワイトウォッシュ」のパロディだよね。

原題の “for your consideration”（ご検討いただけたら）ってのは、映画会社がアカデミー賞の会員に、ノミネートして欲しい映画のDVDを送るときに付ける決り文句で、DVDをかけると、本編の最初かなんかに出てくる言葉なんだって。

最後の結末は書かないけど、私は「これリアルだなあ〜」って思った。殆どの俳優さんはこういう道を歩むんだろうなあ〜って。