よーだ育休中

デイ・シフトのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

デイ・シフト(2022年製作の映画)
3.5
カリフォルニア州でプールの清掃員として働くBud(Jamie Foxx)の本職はベテランの吸血鬼ハンター。規則違反を重ねて組合を追われた彼は妻子と別居中。経済的困窮により妻子がフロリダ州の実家へと帰ってしまうことを阻止するため、Budはまとまったお金(娘の学費と歯の矯正費用)を捻出すべく組合に頭を下げる。


◆初のネトフリ限定作品

ホラーは苦手ですが、吸血鬼モノは好き(ややこしい奴)なので鑑賞。Netflix限定作品なので勝手に二流作品なんだろうなと高を括っていました。ごめんなさい。何これめっちゃ面白い。

冒頭のJ.Foxxと吸血鬼との戦闘シーンから見応えがあります。暑い日差しが照りつける屋外から、カーテンが閉め切られて明かりの灯っていない室内へ。横スライドでわかりやすく場面が切り替わり緊迫感が高まります。

吸血鬼を含め、超人的な力を持つキャラクターの戦闘シーンで《重力》が軽視された演出はよく見かけますが、今作では《関節》もガン無視。ゴキゴキゴキゴキッという音が聞こえてきそうなほど、おばあちゃん吸血鬼の身体中の関節が360°可動して襲いかかってきます。鏡に映らないお決まりの演出も冒頭から披露。

『鬼滅の刃』を見すぎたせいか、苦戦するJ.Foxxに対して「昼なんだから陽に当てたらいいのに!」と無粋なことを考えてしまいましたが、その疑念も後に払拭されました。


◆よく練られた世界観

今作で素敵だったのが世界観。吸血鬼ハンターというと、「大義のために」「復讐のために」「生存するために」吸血鬼を狩るというのがテンプレだと思っていましたが、今作のハンターたちが吸血鬼を狩る理由は非常にシンプル。「生活(お金)のため」。

ハンター諸君は、殺した吸血鬼の牙を売って(組合が買い取って)生計を立てる仕組みになっていました。故に、吸血鬼を陽の光に晒して焼き殺すことは出来なかった様です。吸血鬼の種族や年齢によってレートを変えるという芸の細さは脱帽。

組合から追われたBudがモグリの店で足元を見られて買い叩かれたれたり、同業のライバル(白人)の方が同じブルーカラーでも技術系の職でカモフラージュしていたりと、黒人の「生きにくさ」を皮肉ったような設定も小技が効いていました。


◆魅力的なキャラクター

組合から追われ、妻子と別居している主人公について、最初は粗野で協調性のないヤバい奴という印象を持ちました。この点についても、ごめんなさい。お父さんめっちゃいい奴じゃんかよ。

組合の規則を破ったのは自分や家族の命を守るため。妻に愛想を尽かされたのも、家族を吸血鬼たちの仇討ちから守るために秘密を打ち明けなかったから。ちょっと不器用なだけで、なんだかんだ面倒見の良いアニキ分でした。内勤のなよなよ系お兄ちゃんとの掛け合いも面白く、バディムービーとしても中々の良作。プロットが割とありがちでしたが、下地は続編も十分いけそうなくらいにしっかりしていると思います。


冒頭でコンクリに生き埋めにされた彼だけか不憫でした。現在X(旧Twitter)で更新中の『ちいかわ(島編)』でも、キーキャラが「なんかずっとくらーいところ」で「永遠のいのち」を味わってもらうなどと不吉な発言をかましていました。かぶるんじゃあ。