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スクール・フォー・グッド・アンド・イービルのLCのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

とても好き。

おとぎ話を題材に、「ゆーて人はハッキリ善悪のどちらかに振り分けられないものだよね」という当たり前の部分を描くのだけれど、では何を軸に物事を考えたらいいのか、というところも明確に描写している。
そういうものが、非常に理解しやすく語られていく作品。

善と悪のどちらかに所属し、「善とは」「悪とは」ということを学ぶ授業に参加する。そんな学校で繰り広げられる物語。
善の授業を覗くと、「美しくお化粧をして、綺麗な笑顔を作る」とかしてる。一方悪の授業では「醜くなるということは、その人が見た目に気を取られる時間を減らすことだ、これはつまり、自由ということなのだ」と言っていたりする。
この「外見」の件については、物語後半でも面白い仕掛けを通して問い直してくる。
醜く見える者と、美しく見える者、その外見が変われば、善悪の立場もまた変わるだろうか。

学校が善と悪の過度な交わりを制限しているんだ。あの人は悪に所属しているし、僕は善の者。だから、手を貸すことはできないんだ。
そう主張する王子様がいるのだけれど、「自分の頭で考えて」と辛抱強く伝える人もいる。決められた判断基準を盲信するのではなく、自分の視点も持って、と。
これが、おとぎ話の世界観で語られるところが上手いなあと思う。どんなに耳が痛くなる主張も、ファンタジーの色を纏うので、矛先が丸くなる。
本作はきちんと言葉でグサグサと伝えてくるものの、世界観の力で受け取りやすくしていて、そういう心遣いに溢れた作品という印象。
「善だから」「悪だから」という単純な視点や判断基準が目立つようになって久しいけれど、本作の物事や人に対する解像度の上げ方が、やはり易しい。

物語も面白いのだけれど、衣装や小道具、背景も勿論素敵。それらを眺めるだけでもあっという間に時間が過ぎる。
とりあえず学院長の部屋に続く階段は触ってみたい。実際に登るのはたぶん怖い。でも機会があるなら登ってみるかも。
青の森探検も行ってみたい。瑞々しい香りで溢れているのかな。割と虫がいたりしたら逃げちゃうな。私が。虫除けスプレー持っていけば何とかなるか。

性愛によりパートナーとして成立したら、女性側が男性に属する存在になる、という考え方にも手を振っていて、そこも好き。
今まで積み上げてきたものを選択して良いんだよね、惚れた人に全てを捧げて、友も故郷も諦めなくてもさ。
結婚して男性側の土地に移ってきた為、周りに友人も頼れる人もいません、なんてお話は、今でも普通に耳目にする。
世界を切り裂くくらいなら、彼にとっては友のいない、親しみのないその場所へ、彼女と行っても良かったよね。女性に付いていくことはカッコ悪いことじゃないと思うし。
でもその時留まったのは彼の選択なんだし、それでも会いたいなら、ナイフを投げるより、素直に会いに行く手もあるよ。

悪なんて嫌、という人に、「悪じゃないよ、人間なだけ」という一言が好き過ぎる。
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