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ムクウェゲ「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師のtaominicocoのレビュー・感想・評価

4.5
アフリカ、コンゴ共和国の東部ブカブのいう地区は「女性にとって最悪な場所」と言われているそうです。
ブカブでは、40万人以上の女性がレイプ被害に遭っている。
この地区の医師・ムクウェゲ先生は、無償で彼女たちの治療にあたっています。2018年にノーベル平和賞を受賞。

コンゴ共和国でこれほどむごい性犯罪が蔓延していること、まったく知らなかった。

レイプはコンゴの武装勢力が組織的に行っており「テロ行為」とムクウェゲ先生はいいます。
兵士たちが欲望を満たすためにレイプするのではなく、住民たちに自分たちの力を示すため、支配するためにしている、という事実に驚きが隠せなかった。。。

赤ちゃんから老齢の女性まで標的になっていて、言葉にするのも憚られるほど身体的にも精神的にも破壊されてしまう。
あまりのむごさに度々、ため息が出ました。涙も出た。

武将勢力はなぜコンゴ・ブカブに執着するのか?

レアメタル、錫(すず)、金、ダイヤモンドなど、お金になる鉱物資源の産出地域だからだそう。武装勢力がここで鉱物を採掘し、武器を購入する資金源にしている、と。

聞いてピンとくる人もいるかと思いますが、レアメタルも錫もスマホやパソコンになくてはならないもの。

毎日何気なく使っているスマートフォンが誰かの犠牲の上で供給されていること。知ったわたしの胸中は、複雑を極めました。

わたしがスマホを手放せばコンゴの女性を救えるのか……?
そうは、到底思えなかった。それほどまで根深い。

根深さを痛感したのは、武装勢力にリクルートされ仕方なくレイプに加担した男性たちの証言。

「仕方なかった」「レイプしろと命令され、逆らえば自分が暴力を受ける」「レイプする時ドラッグを渡され、ドラッグをするとなんでもできた。。」

加害者であり被害者である彼らもまた、レイプ被害に遭う女性と同じぐらい量産され続ける、コンゴ共和国の異常な縮図。

容易には解けない、どうやったら正せるのかと絶望的な気持ちにもなりました。

上映後に立山監督が舞台挨拶され、「なかなか答えの出ない問題ですが、(コンゴの性犯罪)について考え続け、この問題をみんなで共有することが大切だと思っている」といったニュアンスのお話しをされていました。

ムクウェゲ医師は日本人の「利他」的な感性がとても好きなんだそうです。
他人(コンゴの女性たち)のことを、自分事として考える。

私には、大きなアクションは起こせません。無力。
ここでこの作品を共有することが、唯一、自分事として考え、できる行動です。

まだ上映館が少ないですが、観て良かった知れて良かった作品でした。
いずれ配信やレンタルされた時は、思い出してもらえたら…と願います。
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