ゆう

ムクウェゲ「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師のゆうのレビュー・感想・評価

3.5
この映画を観るまで、ムクウェゲという医師のことも、ノーベル平和賞を受賞していた事も、コンゴ民主共和国がこのような状態である事も全く知らなかった。
何の為の平和賞なのか、日本のメディアが報じないだけなのかなんなのか分かりませんが、TBS政策のこの映画は本当に意義のあるものだと思う。

出産中に命を落としてしまう妊婦を救いたいと、父が牧師さんで、父が祈りを捧げて救済する人ならば、僕は薬を使って人を助けるんだと、産婦人科医を志したムクウェゲさんが、蓋を開けたらレイプで傷付けられた人を救っているという現実。やるせないにも程がある。

1日に7〜8人のレイプされた女性が運び込まれ、被害者が生後半年の赤子から91歳の老婆まで及ぶという衝撃。
性的テロリズムという言葉を使っていたが正にその通りだろう。
銃や弾を買うには金がかかるが、性的暴行であれば安価に人を支配下に置けるという理由も何とも残酷な話だ。
レアメタルを元にパソコンやスマホという文明機器が作られている一方で、その採掘場では文明とは程遠い野蛮で下劣な行いが横行しているとは、その恩恵にあずかっている人の殆どが知らないだろう。

武装兵として実際にレイプしている連中も、元は自分の村を襲われ、半ば強制的に兵士にさせられているいわば被害者というのも嘆かわしい。
リベリア内戦を題材にしているといわれている『ジョニー・マッド・ドッグ』でも同じような境遇の少年兵が描かれているが、戦争や紛争の被害者はいつだって弱い立場の子供であり女性に向けられるのだと改めて思い知らされる。

現在、ロシアがウクライナに侵攻中であるが、やはりここでもロシア軍の兵士が女性に対し性的暴行をはたらいているというニュースが取り上げられている。国際刑事裁判所がロシアの戦争犯罪の疑いについて捜査中との事で事実の究明をしっかり行って頂きたい。

認定NPO法人テラ・ルネッサンスという団体がコンゴ民主共和国へのボランティア活動を行なっているようだ。ふるさと納税という形でも寄付出来るみたいなので、支援してみようと思う。

ムクウェゲさんが訴える、しっかりとした裁きが下される法治国家へといち早く生まれ変われる事を祈ります。
ゆう

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