磨

ムクウェゲ「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師の磨のレビュー・感想・評価

3.5
コンゴ民主共和国、20世紀末までザイールと呼ばれていたこの国東部の都市ブカブ(ブカヴとも書かれる)。
年間2,500〜3,000人の女性が武装勢力にレイプされると言われるこの国で、心身ともに重傷を負った女性を無償で治療する婦人科医デニ・ムクウェゲさんを追ったドキュメンタリー作品。

「抵抗しました。とても体が痛かった」と涙から始まる冒頭からキツい。
その後も女性たちのコメントは生々しく、聞くに耐えないモノもあるが、世界を知るという意味で、観て本当に良かったと思った。

なぜ、この地域が…?という謎には、我々にも衝撃の事実が明かされる。2018年にノーベル平和賞を受賞したムクウェゲさんが訴える惨状、そして被害者たちのコメントは重く、辛い。
被害者だけではなく加害者もインタビューに答えているが、これに対し「幸せに生きやがってけしからん!」と怒るのも簡単。でもそれだけで片づけるのも違う気がする。それほどまでに闇は深い。


同じ世界、同じ時間で起きているという事が信じられないほどの現実。しかし、ファストファッションの労働力問題と同じく、実際に我々の生活に関連するものだから“不都合な真実”と言わんばかりに蓋をしているのかもしれない。

誤解を恐れずに言えば、情報が逐一世界中に報道・拡散されているウクライナ侵攻の方が余程マシだと思う。
磨