KnightsofOdessa

ツガチハ日記のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ツガチハ日記(2021年製作の映画)
2.5
[ミゲル・ゴメス版『メメント』]

ミゲル・ゴメスがパートナーのモーレン・ファゼンデイロと組んだ初の作品。22日目(という中間字幕)。クリスタ、カルロト、ジョアンの三人が部屋の中で踊り狂っている。開け放たれた腰窓からは夜の木々が見え、真っ暗な部屋の中は外から入る色とりどりの光で満たされている。カルトロが一時離れて戻ると、クリスタとジョアンはキスをしている。いきなり何が始まったのかと思ったら、物語は『メメント』のような逆順しりとりを日付のカウントバックによって語っていくスタイルで展開される。21日目、20日目、19日目。軒先に放っておいた果物が腐った状態から元の状態に戻っていく。三人で建てた簡素な庭園も更地に戻っていく。"TSUGUA"という見慣れぬ単語は"AUGUST"の逆順であり、そこからも逆順で日記が展開されることが分かるだろう。日が戻るに連れて、日記は映画内映画の撮影現場というメタ視点も内包していく。つまり最初の方の三人の生活は映画内映画だったのだ(カルロトとジョアンがセリフを入れ替えて同じ場面を演じ直したりするのはそういう理由)。しかし、ゴメスもファゼンデイロも因果律を入れ替えることにも興味があるわけではなさそうなので、頭でっかちな理論先行による映像と構造の乖離に起因する虚無感がある。一応、映画の真ん中くらいにあるミーティングで、この映画が"キャラクターを構築/創造すること"を主軸に置いていることが明示されるが、それが特段上手く機能していたとも思えない。コロナ禍での撮影風景を記録したというだけ。
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