悪魔の毒々クチビル

プレデター:ザ・プレイの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

プレデター:ザ・プレイ(2022年製作の映画)
4.4
血が出るなら殺せる

300年前、コマンチ族のハンターとプレデターとの戦いを描いたお話。

当初のタイトルは"Skull"でしたが、主人公らコマンチ族やプレデターともに狩りをしながら生きている共通点もあってか"Prey"になりました。
ただそれだけじゃプレデターの新作だと伝わるか不安に思ったのか、邦題で「プレデター」付けちゃう辺りはね、相変わらずよね。

さてプレデター待望の新作ですが、まさかの配信オンリー。アメリカがHULU、日本だとディズニー+のみで視聴可能です。他の国は知らん。
個人的には1は勿論、プレデターというキャラ自体が大好きでして。1は未だに投稿していないんだけど、前作「ザ・プレデター」は多分フィルマで書いた感想史上一番長ったらしく書いた気がするくらい。
だから今回も久々に長文で感想書こうと思いますので、暇だったら読んで頂けると幸いです。
で、そんなプレデター大好きマンとしては今作、配信のみという事や今更時系列を巻き戻してしまったプロット等々、観る前から期待半分不安半分だったのですが……


ほうほう。面白いやんけ!
後に詳しく触れますが事前に不安視していた部分は見事に適中してしまった一方で、期待していた部分は全てではありませんが期待以上のものを見せてくれました。

じゃあまず良かった所。
それすなわちプレデターですよね。
まず今作のプレデター、今までとはかなり異なる見た目や装備となっています。
お馴染みのリストブレイドは健在ながら、ガントレットに円形のシールドが付いていたり、小型の爆弾を発射したり分解式のスピアかソード?と今まで見たことのない装備が格好良かったです。シールドはそのまま武器としても使えて、相手の首を切り落としていました。イイネ!
ガントレットのデザインもちょっと旧型感あったし、リストブレイドも従来とは違って両端から出ていましたね、そういえば。
前作で出てこなかったネットランチャーを使っていたのも嬉しい所。しかも今作、剃刀型の網は相変わらずながら相手を捕らえたら、そのままデバイスで強制的に締め上げる機能が過去一なのか捕まった人間が一瞬でミンチになっていました。最高かよ!
意外だったのはプラズマキャノンは装備していなかったこと。あの三点レーザーはあるんだけど、代わりに発射するのは小型のスピアでした。流石に300年前が舞台とは言え、そこら辺のハイテク武器は普通にあるだろうに。
敢えて内容に合わせたのかも知れませんが、流石にトップクラスに有名な武器は出して欲しかったかな。あのスピアも良かったけどさ。

あと見た目ね。
動物の骨を模した様なマスクを着けていて、下顎部分は普通にはみ出ています。
なので今までのあの金属マスクに慣れている身からすると違和感バリバリでしたが、これはこれで悪くはない。
もっと違うのが素顔で、過去に出て来たクラシックタイプでもなければバーサーカーやアサシンプレデターとも似つかない細長フェイスで、ぶっちゃけこのデザインはあんま好きじゃないです。
最初は原始的で簡素な装備で、何となく若いプレデターなのかなとも思っていましたが素顔があれなら、またバーサーカーみたいに別種のプレデターってことなのかな。大分野獣らしさが強調されていました。
それと、前作みたいに獲物の返り血で透明化しているプレデターのシルエットが浮かんでくるシーンがあったの、めっちゃ素敵やん。

それで開始10分程度でプレデターが地球に降り立つ一方で、展開は遅め。
ただ狼や熊といった野生動物を狩るプレデターが中々新鮮だったので、まぁそこは楽しめました。
後半のハンターグループvsプレデターはかなり見応えがあって、先述した武器で殺戮し放題な勢いが超サイコー。斧を奪ってクルってキャッチする所もクソ格好良かったです。
特に鎧とかも着けていなくて結構傷を負いますが、割と気にせず戦っていました。後で治療はしていましたけど。
舞台が森なので、光学迷彩で姿を消したプレデターの神出鬼没な恐怖も「プレデターズ」よりは断然上手く描けていました。強いて言うなら獲物を観察するシーンがもっと欲しかったですね。

あと作風は1を意識していると思うんだけど、2の小ネタというか、あのアイテムが出て来て思わずニヤリとしました。
多分コミック版と設定違うと思いますが、そこはまぁ良いでしょう。「お前が持っとるんかい!」とは思いましたが。


ここからが悪かった点。
今作で単独シリーズ初の女性主人公かつ、彼女がハンターへと成長していく内容だと知って、このご時世ってのもあってプレデターが主人公ナルの成長への踏み台みたいな扱いにならないか危惧していましたが、結構それに近い感じでした。
個人的にプレデターの新作に求めているのって、まぁいくつかありますがプレデターという種族の掘り下げは上位に来るんですよね。
前作、前々作で種族や思想の違いでプレデター同士が殺し合う展開があって、これかなり気に入っている要素でして。
コミックでも掟に反するバッドブラッドを始めとした、アウトローなプレデターがいたりと普通に掘り下げがいのある設定を持つキャラなんですよね。極端な話、プレデターが主人公の作品が造られても全然アリだと思うくらい。
原作読んだことないけど、マジでバッドブラッド映画化してくれないかな。
今作でも折角新たなプレデターを造り出したのに、あくまで脅威としてしか描いていなかったのは非常に勿体ない。

そしてラストバトルの呆気なさ。
いくつか今作を紹介していたサイトで、ナルを最強の戦士みたいに解説していました。しかし本編を観た方なら分かると思いますが、ナルさん、あんま強くないです。
確かに兄や他の部族に認められる為に日頃から狩りの練習をしていますが、プレデターと戦うまではろくに鹿どころかウサギも狩れないしライオン狩りでも木から落ちて気絶する始末。
何故か人間相手には善戦していましたが、正直あまり魅力を感じない主人公でした。もうちょい実績を伴わせてあげた方が良かったのでは。
寧ろ兄の方が1のビリーっぽさがあって印象的でした。というか監督もビリーみたいなキャラを活躍させようと思って、今作を制作したんだったか。
それが急にラストでプレデターに殆どダメージ喰らわずに勝つのは違和感が凄い。
そこは男女関係なく血と泥にまみれた戦闘を見せてくれ。それといい加減自爆させてやってくれ。

そもそも制作当初「300年前、プレデターが初めて人類に遭遇した時代」を描くと報道されていましたが、一応シリーズはAVPとも連結はしているので(「ザ・プレデター」では「エイリアン」シリーズとの関連を示唆するエンディングも撮影だけはされていた)、「プレデターって300年どころかもっと前から地球に来てんじゃね?」と思っていたのでわざわざ初めてを強調する意味も無いかと思っていました。
て言うかAVP関係なくても地球の生物は人間含め昔から狩っていそうだし。
プレデターの寿命が明らかになっていない分、そこは何とも言えませんが少なくともあの時代の段階で普通に惑星間を移動して、各地で狩りが出来た状態なのを考慮するとやっぱりそこは引っ掛かりましたね。


あとゴアはあるけど前作の方が良かったかな。
ただ今作ではプレデターが蛇の皮くらいしか剥いでないのは大いに不満です。

そんな感じで細かい所は気になってしまいましたが、新たなプレデター像が拝見出来たのに加え思いの外しっかり殺戮しまくっていたのでかなり楽しめましたよ。
何ならプレデター出ている時は想像の倍ニヤニヤしながら観る、というキモオタっぷりを炸裂させていたよ。
以前ネットで注文したプレデターのシャツが全然届かなくてイライラしていましたが、大分気が楽になりました。
ディズニー+のみとは勿体ない。
ラストに絵のみでほんの一瞬エピローグみたいなのがあります。アレがどう巡り巡って2のアイツに渡ったのかも気になります。

そしてシュワちゃんは頼むから「ターミネーター」でも「ツインズ」でもなく、戻るならこのシリーズに戻って来てくれ。