なべ

プレデター:ザ・プレイのなべのレビュー・感想・評価

プレデター:ザ・プレイ(2022年製作の映画)
4.0
 遺伝子や殺し屋王座決定戦、対エイリアンなど、足し算の脚本では一作目には及ばないと気づいたのか、原点・“狩る者と狩られる者の戦い”に立ち返った「プレイ」。米国ではHulu配信なので今か今かと待ち構えていたのだが、日本ではなんとディズニープラスの独占(米国ではHuluはディズニー傘下なのね)。うがあああああ!なんでやぁああ‼︎ でも大丈夫。折良くカミさんがお試し期間中だったから。

 今回の舞台はエピソード0的な300年前の北米大陸。主人公はコマンチ族の若い女性だ(ビリーの祖先だったりして)。
 男は外で狩り、女はうちで飯炊きって性役割が我慢ならないナル。彼女は女性であっても一人前のハンターになれると証明したいわけね。このあたりにいかにもディズニーなジェンダー観が感じられるがさほどノイズにはならない。
 300年前なのでプレデターの様相もいつもと違う。鋼鉄のマスクではなく獣の前頭骨を被り、醜い口元がマスクの下からのぞいている。いや、いつもの奴らより面長でブサイクなのだ。体型もやや細身で、もしかしたら女性か。敵もナルと同じ跳ねっ返りって設定なのかもしれない。おなじみの肩プラズマキャノンもまだ開発されてないのか、打込銛を腕に仕込んでいる。例の3点ドットレーザー照準で誘導する仕様だ。
 今回の捕食者はプレデターだけでなく、熊、ピューマ(字幕ではライオンと表記されてたがマウンテン・ライオン=ピューマだ)、そして白人が登場する。特に白人(フランスからの入植者?)は先住民を脅かす存在として、プレデターと同義に描かれているのが興味深い。いや、プレデターのような美学は持ち合わせてないのでクズどもだな。途中のバファローのシーンでミスリードされちゃったよ。
 狩る者と狩られる者が逆転したり、突如現れた別の脅威から狩られたりと、主題の展開も凝りに凝っている。
 一作目はシュワルツェネガーを中心に据えたスターアクションムービーとして傑出していたが、プレイは原点に立ち返りながらも、スターに頼らず、“捕食者と獲物”の話を深掘りしているのが見事。
 スターを劇的に輝かせるアラン・シルヴェストリのあざとい劇伴とは打って変わって、奇妙なフォークロアサウンドがやけに渋い。サラ・シャッハナーって女性アーティスト(ゲームのアサシンクリードも彼女)なんだけど、めっちゃいいセンスしてる!

 そもそもプレデターはローコンテクストなSF。バカでもわかる粗い話ながら、アクションのディテールやクリーチャーデザインが秀逸でファンから支持されてるのだと思う。プレデターの殺戮のルールや美学なんかもそう。だからこそこれは劇場のスクリーンで観たかった。そう思えるほどよくできたプレデターだったから。一作目には及ばないものの(本作を見終わってすぐ1を再生。兵士たちの恐怖描写がもう最高だった)、かなり肉薄した正統な続編といえる。

 あ、ハリガンが貰ったフリントロック銃が出てくるぞ! 2を観てないと意味不明なカットだから、何だっけそれ?って人はおさらいしてね。
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